十六話 こけし【秋田県警】

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十六話 こけし【秋田県警】

 宮部と藤宮は井上くにを秋田県警に連行した。 「正直に話してください。井上さんあのノートの事を詳しく」 井上くには話し始めた「わかったよ。このススキの町の危機は今までに何度か起きていたんだ。  きのこが取れなくなったり流行り病で子供が次々と死んでいってしまい女の子だけが残った時もあったと母から聞いていたんだ。  丁度100年以上前の事だった流行り病がこの町を襲って女の子だけが助かり男の子がバタバタと死んでいったそうだ。  母達はこれ以上子供が死なないようにとススキの町の人と一緒に神様に手を合わせていた。  そのころから神社にもう病気が流行らないようにとこけしを神社に納めて祈る事が風習になったと母から聞いたんだ。  その事がきっかけでこけし職人になりたいとこのススキの町に来る若い人が増えたと母から聞いています。  こけし職人が増えた頃その様子をテレビ局が取材にきたそうです。  そんなススキの町が生き生きした頃私が生まれたと聞いています。  ところが、私が生まれてから暫くするとまた流行り病が流行ってしまい今度は女の子がどんどん亡くなっていきました。  ススキの町は当時呪われた町と言われ恐れられていました。  そこで私の母は「このままススキの町の人間がどんどん死んでしまうと後継がいなくなるばかりか町が廃れてしまう。  それを心配した母は、女の子に手作りのこけしを送ると女の子は丈夫に育つと噂を流すことにしました。  そして母は言ったんです。噂だけでは町を活性化できないこけし祭りを開催しようと〜。そして若い人をここに住み着いてもらえるようにしようと。母は町のみんなに言いました。  男の子や女の子をここで棲みつくように洗脳しよう。こけしは子消し祭りとしてわからないように子供をさらって洗脳しようと私はノートに書いてあるようにこけしには緑の文字で子供だけに反応するインクで書き東京に住んでいる子供を自ら外に出させてお神輿に乗せてヘリで外国にそっくりな岡山の牛窓町に連れて行ったのです。  私達も母も牛窓町で毎日子供達をここで働きたくなるように洗脳したんです。周りはロケのセットのようにして子供達に外国で生活しているように見せました。  子供達の世話は全て日本語ができる外国人を雇いました。初めは怯えていた子供達も楽しんで生活していました。そしてススキの町で働きたいと思わせる洗脳に成功したんです。  私も母も町が生き残るにはこれしかなかったんです。  サンデー特集と私達の出会いは今から30年前の事です。私の後輩が何かネタになるものはないか?と言ってきました。  このままでは、サンデー特集が打ち切りになってしまう。何かネタはないか?とだいぶ前にアナウンサーを辞めた私にアナウンサーの櫻井鈴鹿と今井賢治に相談されました。  だからこの町のこけし祭りを撮影するように言いましたそして、私はその時にこのノートを鈴鹿に見せて再現してもらったんです。  鈴鹿は喜んで撮影をしました。これが全てです。ところが度々サンデー特集は視聴率に悩む事がありました。  私達はススキの町でわざと万引きを捕まえるやらせをさせたりこけし職人のドキュメントを撮影させたんです。その見返りにお金をいただきました。だから今回もススキの町の活性化のお手伝いをしてもらったんです。私も昔ですがサンデー特集の登山チャンネルのアナウンサーをしていたので後輩の櫻井鈴鹿の為に協力していたんです」  宮部は「そうなんですね。あなたはお母さんが考えた子消し祭りを真似したんですね」 井上くには「そうです」と答えた。  すっかり洗脳されてしまったこけし祭りで行方不明になった子供達はススキの町で働くと言っている。子供達の両親もそれでいいと納得して東京から引っ越して来る家族も出てきている。  警察は何とか洗脳を解こうとしたが全員「ススキの町はいいところだから働きたいと言って誰も誘拐されたとは思っていなかった。  誘拐に関わったススキの町の住民は捕まったが 洗脳された子供達は未だに何で捕まえられたのかわからずにいた。  「藤宮さんこの町は井上くにさんが言った通りまた誰かがこけし祭りを開催するかもしれない。そして洗脳された子はまたここで働く。この町は廃れないかもしれないね」 藤宮は「そうですね。誘拐を未然に防げるように私達がこの町を注意深く見回りましょう」 宮部も「そうだな。もう二度と誘拐されないように」そう言った。 完
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