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茶髪に着崩した制服。平均より数cm高い身長。
同じ夏を過ごしているとは思えない白肌。
彼は俺の横を黙って通り過ぎ、3階の化学実験室前で止まった。
今は授業中だ。彼は鞄を持っていなかったから、遅刻じゃない。
一体そこで何をするつもりだ?…っていうか、誰だ?
無性に気になって、後をつけるように彼を追った。
息をひそめて、じっと様子を伺っていると、
彼は何の躊躇いもなく火災報知器のボタンを押した。
「はっ!?」
火災報知器の音と同時に、俺は驚きのあまり声を上げた。
その声にビクッと肩を揺らした彼と目が合う。
彼もまた、俺を見て目を丸くした。
いや、なんでお前がびっくりしてんだよ?
「毎度毎度なんやねん、ほんま…」
階段を下りてくる先生の呆れた声が聞こえる。
まずい。ここにいたら、
アイツと一緒に悪戯で火災報知器を鳴らしたと疑われる。冤罪はごめんだ。
早く逃げようと思ったら、目の前にいた彼の姿が無くなっていた。
逃げたのだ。
「ん?小野田やないか」
逃げ足の速さに呆気にとられていると、先生に見つかってしまった。
そのまま俺は、有無を言わさず生徒指導室に連行された。
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