第1話:長屋頼唯

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第1話:長屋頼唯

灼熱の日差しに揺れるビル街。熱風が頬を撫でる。 頭から全身に沸くような滝汗と、 靴底を突き破るようなコンクリートの熱さ。 俺は今、夏の中を全力で走っている。 アラームをかけ忘れた自分を恨んで、人が二度見するような形相で、 昼に近い朝を駆ける。 人生で初めての大遅刻。俺は焦っていた。 校門を抜けて教室がある4階へと急ぐ。 寝起きの階段ダッシュほどキツいものはない。 「はあっ…はあっ…」 3階の踊り場で息を整えて、地面に落ちる汗を見る。 一度立ち止まると、怠惰な悩みが出てくる。 このまま教室に入って、クラスメイトの前で先生に叱られるくらいなら、 仮病を使って休んで、後で母親に怒られる方がマシなんじゃないか。 授業つまんねぇし…でも、教室は涼しいよなぁ。 カッターシャツが背中に張り付いた状態で、 またあの灼熱地獄を味わうのは、少々体に堪える。 涼しさと面倒臭さの狭間で揺れていた時、誰かが階段を下りてきた。
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