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昼休み・放課後と、先生にこっ酷く怒られた。
俺は大人しくその説教を聞いていた。
否定すればするほど、なんか言い訳みたいになりそうで。
やけにしおらしい俺を見て、先生もつまらなくなったんだろう。
「謝るくらいならやるな」だって。俺じゃないっつうの。
解放された頃には生徒は誰も居なくて、1人教室に自分の鞄を取りに行った。
それにしてもアイツ…明日学校中探しまわって、文句言ってやる。
苛立ちを抱えたまま教室の扉を開けると、
待っていたかのように、俺の机に腰かけるアイツがいた。
「えらい遅かったなぁ。何してたん?」
まるで友達みたいに話しかけてくる。むかつく。
文句言ってやる気でいたけど、無視して早く帰ることにした。
「待って、嘘やから!ごめん!」
背を向けた俺の腕を掴む。
「先生に怒られてたんやろ?何で本当のこと言わんかったん?」
正確には、言わなかったんじゃなくて、言えなかった。
コイツが火災報知器のボタンを押す瞬間、その表情がやけに頭に残っていた。
悪戯なら絶対できない表情。縋るような、少し切ないような。
それが俺の口を縫い付けて、言えなくしたのだ。
「……お前の名前、知らないし」
拗ねた小学生みたいに、ボソボソと話す。
すると、花が咲いたように彼が笑った。
「お前ええ奴やなぁ!おれ、長屋頼唯っていうねん!名前なんて言うん?」
急に肩を組まれた。なぜか、嫌な気はしなかった。
「…小野田はるか」
「はるか!女の子みたいな名前やなぁ~」
「う、うるせぇ!お前だって戦国武将みたいな名前してるだろ!」
「戦国武将って!おもろい奴やなぁ~」
教室を出る時にはもう、苛立ちなんてものは忘れていた。
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