さよなら尾崎くん

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帰宅途中の夕暮れ。いつものように公園沿いを歩いていると、年の瀬が僕と同じくらいの男の子が遠くに佇んでいた。どこかもの悲しげな雰囲気に気に止めて歩き進めると、異様な風貌に気づいて身体がこわばる。 「ひっ!」 思わず出た悲鳴を飲み込み、心を落ち着かせて焦点を合わせる。あろうことか彼の顔は半分ほども欠けていたのだ。なにが原因で惨事に見舞われたのかは知らないが、事故からそれほど時間は経っていない。ざくろのように割れた傷口は真新しく、流血も滴っている。なにより、この死に体でも立っていることが恐ろしい。肌が泡立ち動けずにいると、虚だった視線がふらりとこちらを向いた。 「う、うわぁーっ!」 居た堪れず、地面を蹴って一目散に家路を走る。この日を境に「公園を彷徨う人」を頻繁に見かけるようになった。まるで野鳥や野良猫のように、日常風景に溶け込む彼らは異様だったが、それでも勇気をもって観察を続けているうちに、幾つか気付くことがあった。
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