さよなら尾崎くん

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幽霊騒ぎに巻き込まれた当初、どうしてこんなことになったのだろう?と、人知れず思い悩んだことがあった。そのとき計らずも「因果」という言葉と意味を知った。ありていに言えば、善行を行えば幸福に巡り会うし、悪行を行えば不幸に見舞われる。もっと掘り下げて調べてみたら、前世の悪行が、現世では罪滅ぼしという形で、不遇な日々を送ると書いてあった。なんて理不尽なことだろう。悪事など働いたことは無いし、前世の所業なんて知るよしもないのに。そんなことを思いながら月日は流れ、高校に入学すると運命的な出逢いがあった。尾崎君だ。 心理学、工業学、物理学等々、数ある学問を総称して「カガク」と呼び、どんな奇怪現象も説明できぬことは無いと豪語する、一風変わった男。彼なら、僕がいま直面している「因果」なるものから解き放ってくれる気がして。もっとも、悩みを打ち明けてしまうと、幽霊どころか僕の存在ごと否定されるのではないかと怖くなり、未だに相談したことはないのだが。 生徒たちの笑い声で周囲が包まれる中、ぼんやりと目を泳がせていたら尾崎君と目が合った。
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