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「とりあえず、委員長からの事前の指示通りに動いといて。何かあったら、俺に無線機で連絡くれ」
「「「はい」」」
俺が指示を出したあと、風紀委員達はそれぞれ散らばっていった。
__そして、鬼ごっこ開始から30分。学園内を徘徊しているが、このくらいの時間になると、大体アレが出てくるんだよな。そう思いつつ社会科資料室前に差し掛かったとき、
「…っやめて、ぅ…」
「ちょっとくらいいいだろ?」
扉の奥から2人の男の声が聞こえる。ああやっぱり始まった。しかも合意じゃないやつだ。
「失礼します」
躊躇なく扉を開けると、小柄な男子をガタイのいい男が押さえ付けている。
「は?てめぇ誰だよ」
「風紀だよ」
風紀って腕章付けてるだろうが。
「どうでもいいから邪魔すっ─!?」
容赦無く相手の急所に蹴り入りたあと、背負投げる。そして、気を失ったそいつを縄で縛ってから、無線機を取り出し、回収班に風紀室に連行するように頼んでおく。
「あー、大丈夫ですか?」
「え?あっ、うん!」
ポカーンとこっちを見てる被害者に声をかけた。ボタンが数個外れてるだけだから、強姦未遂(現行犯)だな。
「ありがとう。強いんだね」
「風紀は結構危ないやつ相手するから、ある程度出来るやつじゃないと駄目なんです」
「そうなんだ」
被害者は興味深そうにうなずく。
「3年の、天見日向先輩ですよね」
「知ってるんだ」
知ってるよ、親衛隊持ちだから。でなきゃ、風紀なんてやってられないんだよ。天見日向は、小柄でふわふわとした可愛らしい感じが人気の、抱きたいランキング上位者。現在は家庭科部部長を務めている。
「君、副委員長の子だよね。ほんとにありがとう」
「いえ、それが仕事なんで。あ、捕まったんなら体育館まで一緒に行きます」
何度もありがとうと言う先輩と一緒に歩き出す。
「捕まっちゃったんだ」
残念そうに呟く天見先輩。そういえばこの人、
「敦とデートしたかったのに」
悔しそうに言う。三田敦、筋肉質な身体をもつ濃いイケメン。抱かれたいランキング上位者で親衛隊持ち。体育委員長でもある。
天見先輩が体育委員長に片想いしているのは有名な話だ。噂では、天見先輩の告白に、鈍感な体育委員長が、全く気づいていないらしいと聞く。
「自分で誘わないんですか」
「二人で遊ぼうって誘ってるよ、何度も。でも敦が『それなら他のやつも誘おう』って言ってくるから」
先輩は苦笑混じりに答えた。呟いた時点から思っていたが、誰かに聞いてほしかったんだろうな。
「押して駄目なら、引いてみたらどうですか」
「引く?」
引く……と天見先輩が考え込んでいると、体育館に着いた。
「じゃあ俺はこれで」
「あ、ありがとう!試してみるね!」
まさか、恋愛相談されることになるとは。
……あくまで噂というのは噂にしか過ぎない。実は照れ屋なだけの体育委員長は、天見先輩が引き始めたら、果たしてどうなるだろうか。俺には関係ないけどな。あとはご両人で仲良くしとけばいい。
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