閑話 僕の王子様(栗見side)

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閑話 僕の王子様(栗見side)

──鬼ごっこ開始直後。 もう、本当に羊とか最悪。赤いリストバンドが羊とか、見つかりやすいじゃん。狼だったら書紀様を捕まえれたかもしれないのに……。 これだったら、木島みたいに不参加が良かったなぁ。っと思っていたら、後ろから急に腕が伸びてきて身体を拘束された。えっ……! 「はぁ…花恋ちゃん……」 「ちょっと!!」 耳元で、欲情する男の声が聞こえる。 キモいキモいキモい!!名前呼びとかホント勘弁してよ!人気のない会議室に来たのがまずかった。 「はぁはぁ…俺とイイコトしようね……」 「っやめて!離してよ!」  もう本当に最悪。シャツの上からベタベタ触ってくる感触が気持ち悪い。誰か__ 「ゔっ」 急に身体が解放されたかと思うと、キモ男の悲鳴が聞こえた。 「えっ……」 「だ、いじょ…ぶ?」 ……嘘、僕今死にかけてるのかな。小波様が目の前にいるなんて。混乱していると、何故か目の前の小波様に抱きしめられた。 「?!」 「怖か、たよね。も、だいじょぶ」 あ、この優しい感じ……間違いなく小波様だ。喋るの苦手なはずなのに、僕を慰めるために頑張ってくれている。 「小波様、ありがとうございます。でもあんなキモ男くらい全然…」 あれ、な、何でだろ、急に足に力が入んなくなってきちゃった。黙り込む僕を静かに小波様が見つめる。 「ん…送る」 「えっ」 え、えええ!!!……ああどうしよう小波様にお姫様抱っこされてるよ僕。夢これは夢なの?? ありがとう神様、小波様……。もうこれから一生ジャンケン負け続けてもいいです。
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