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5.遊園地デート
「“例外ルール”適用?」
「ああ」
昼の風紀室。新入生歓迎会関連が一段落したため、風紀委員長と副委員長の俺2人だけの活動だ。
「何ですか、例外ルールって」
「今回の特典で、遊園地デートを選んだのは2人だけだった。流石に小型バスでも、もう少し人数が居ないと殺風景だろう」
「車で行けばいいのでは?」
「バスは既に予約済だ。だから今回は生徒会全員と、監視の意味を込めて風紀から俺とお前が遊園地デートに参加することになった」
「例外ルールなんて言い出したの誰ですか」
「理事長だ」
…理事長恨みそう。帝と居られるのはいいが、地球外生命も居るのが最悪だ。すると急に聞き覚えのある音が……あ、俺の電話か。
「委員長、失礼します」
「ああ、構わない」
風紀室内の奥にある、休憩スペースで電話に出る。
「この時間帯に電話って珍しいな」
『聞いたか?休日は(お前と)家でくつろぐはずだったのに』
「まあ、仕方ないよな」
『あぁ…』
「俺も残念だけど仕事だからやるしかない」
『……たとえ仕事でもあのマリモがいることが許せん。人の恋人殴りやがって』
新入生歓迎会のあと、頬に怪我したまま帝の家に行くと、帝が問い詰めてきたので、事情を話した。しかし、このままだと帝の不機嫌が続きそうだ。
「俺もアイツだけはほんとに無理。でも、どのみち(帝と)会えるだろ?俺は嬉しいけど」
『それは…俺もだが』
ゴニョゴニョ呟く帝。よし、直ったな。
「頑張れよ。家でゆっくりは来週の休日に持ち越しな」
『ああ、絶対に時間を作る。また夜にかける』
「またな」
ツーツー。はぁ、ほんとに俺の休日返せ、地球外生命体め。休憩スペースから出てきた俺を見て、委員長がからかう。
「例の恋人か?」
「まぁ、そうですね」
委員長にはつい手違いで、俺に恋人がいることはバレてしまっている。相手が帝とまではバレなかったからいいものの、他言無用と約束させた。
「やはり、教えはしないのか」
「当たり前です。今以上にからかわれるのは目に見えてるんで」
委員長は恋バナ好きのJK並みにしつこい。
「名前くらい、会話の最中に呼ぶと思ったんだがな」
そんなヘマはしない。さっきの電話で、俺達は一度も相手の名前を読んだりしなかったし、バレるような情報は一言も口に出さなかった。それに学園内にいる間は、今回のように急な予定変更の場合を除いて、電話は互いにかけないことにしている。
「せめて、女か男か教えないか?」
「しつこい」
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