184人が本棚に入れています
本棚に追加
6.栗見の自覚
最近何やら栗見がぼーっとしている。前の席だから表情はよく見えないが、休憩時間にあまり話しかけてこないのがおかしい。確か新入生歓迎会直後からだな。
「書紀と何かあったのか」
「何でわかるの?!」
うぉ、いきなり振り返ってきた。ぼーっとしてたんじゃなかったのか。そして凄い勢いかつ、ヒソヒソ声で、新入生歓迎会の捕まったときのことを喋り始める。
「__それでね、何とL○NE交換しちゃったの!」
もうどうしよ〜と栗見は騒ぐ。
「良かったな」
「良くない…」
何でだよ。
「文章だと普段と違って長文で、よりスマートな感じだし、昔ポメラニアン飼ってたとか可愛らしすぎるし、どうしたらいいの?」
書紀自身大型犬みたいなのに、小型犬飼ってたのか。
「栗見は書紀と最終的にどうなりたいんだ?」
「どうって?」
「…恋人になりたいとか」
“恋人”と聞くと、ピタッと栗見は固まった。
そしてもじもじとしながら話し始める。
「…はじめは普通に憧れだったよ。けど、実際に話してから、毎日小波様への思いが強くなってきてて…。ねえ、これって恋?」
「俺に聞くな」
「木島が聞いてきたんでしょうが!」
「お前がそう思ったんなら、そうなんだろ」
もう心のどっかで自覚してるから、余計悩んでるんだと思うけど、と付け加えて言うと、栗見の顔が真っ赤になる。
「…そっか。ありがと、相談のってくれて」
「わー、トマトみたいな顔してる」
「ちょっと、聞き捨てならないんだけど?!」
どういたしまして、なんて言ってられるか。
男同士はこんぐらいさっぱりしてる方が、いいだろ。後日、栗見は書紀と、まずはお友達からっていうのを始めたらしい。行動早いな。あの相談別にいらなかったのでは、と疑問に思う俺であった。
最初のコメントを投稿しよう!