6.栗見の自覚

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6.栗見の自覚

最近何やら栗見がぼーっとしている。前の席だから表情はよく見えないが、休憩時間にあまり話しかけてこないのがおかしい。確か新入生歓迎会直後からだな。 「書紀と何かあったのか」 「何でわかるの?!」 うぉ、いきなり振り返ってきた。ぼーっとしてたんじゃなかったのか。そして凄い勢いかつ、ヒソヒソ声で、新入生歓迎会の捕まったときのことを喋り始める。 「__それでね、何とL○NE交換しちゃったの!」 もうどうしよ〜と栗見は騒ぐ。 「良かったな」 「良くない…」 何でだよ。 「文章だと普段と違って長文で、よりスマートな感じだし、昔ポメラニアン飼ってたとか可愛らしすぎるし、どうしたらいいの?」 書紀自身大型犬みたいなのに、小型犬飼ってたのか。 「栗見は書紀と最終的にどうなりたいんだ?」 「どうって?」 「…恋人になりたいとか」 “恋人”と聞くと、ピタッと栗見は固まった。 そしてもじもじとしながら話し始める。 「…はじめは普通に憧れだったよ。けど、実際に話してから、毎日小波様への思いが強くなってきてて…。ねえ、これって恋?」 「俺に聞くな」 「木島が聞いてきたんでしょうが!」 「お前がそう思ったんなら、そうなんだろ」 もう心のどっかで自覚してるから、余計悩んでるんだと思うけど、と付け加えて言うと、栗見の顔が真っ赤になる。 「…そっか。ありがと、相談のってくれて」 「わー、トマトみたいな顔してる」 「ちょっと、聞き捨てならないんだけど?!」 どういたしまして、なんて言ってられるか。 男同士はこんぐらいさっぱりしてる方が、いいだろ。後日、栗見は書紀と、まずはお友達からっていうのを始めたらしい。行動早いな。あの相談別にいらなかったのでは、と疑問に思う俺であった。
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