7.思いがけない事態

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7.思いがけない事態

今日の昼休みは風紀室で仕事……のはずだったのに、何故か生徒会室に居る現在、風紀委員長と帝が向かい合っている。他の役員達は、昼飯を食べに行ったらしい。 「神谷、何故ここにいる」 「泉に会いに来た」 「何故今、」 「というのは冗談で、書類を持ってきた」 「……最初のが本音か」 「どうだろうな」 それを聞いてムスッとする帝と面白がる委員長。もうこれはむしろ仲悪いと言うより喧嘩するほど仲が良いって感じがする。 「書類ぐらい他の奴に任せればいいだろう」 「これでもか?」 風紀委員長が渡した書類を見て、帝が面倒臭そうな顔をする。何渡したんだ。 「制裁行為許可証は、流石に生徒会以外に渡せないだろう?」 「ああ、そうだな」 なるほど、とうとうきたか。おそらく制裁対象は転校生だろう。 「しかし、今まで発行されなかったのが不思議なんですが」 「ああ、今までは親衛隊内で提案はあったそうだが、親衛隊総隊長が許可を降ろせるほどの理由がなくボツになってたみたいだな」 確かに、親衛隊総隊長はトップであるからこそ、リスクを理解している。 「それにしては、無許可制裁も少なくなかったか?」 「今年度の親衛隊総隊長は親衛隊の中でもかなり有能な奴でな。ある程度は押し留められているみたいだ」 親衛隊総隊長が誰なのかを知ることができるのは、規則上、風紀委員長だけだ。俺達の何代か前の年、反親衛隊の生徒達が親衛隊総隊長に暴行を振るう事件があった。そのときに決められたものらしい。 「既に親衛隊総隊長の直筆の署名と、捺印付きだ」 「待て、何故今回の制裁は、そんなに準備万端なんだ?」 普通、制裁許可証発行は年に1回か2回ある程度だ。今回のように新学期早々発行されることはなかなか無い。すると風紀委員長は、神妙な顔で告げる。 「実は、今回の制裁は、親衛対象者自らが提案したんだ」 「何だって?しかし、その親衛対象者っていうのは…」 「ああ、一ノ瀬颯太だ」
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