184人が本棚に入れています
本棚に追加
*
葉桜の目立つようになった今日、校門の前には……
*
「ねえ、大丈夫?」
「大丈夫かと言われると、大丈夫じゃない」
転校生がやってくると、朝から少しざわついた教室で栗見と雑談する。周りが笑顔の中、俺は何故か悪寒が止まらない。
「大丈夫じゃないなら、もっと顔に出してよ。木島の表情筋全く働いてないけど」
「…無愛想なのは元からだ。」
俺は基本無表情だし、他人に対する興味も人より低い。以前よりはマシになったと自分では思っているのだが。
「おーい席つけー」
気怠げな声が聞こえたと思えば、キャー!!っと、チワワ達の黄色い悲鳴が巻き起こる。
気怠げな声の正体はAクラスの担任、蓮巳仁だ。大人の色気があるが、風紀委員長とは違って、夜の危ない香りが漂っている。どこからホスト連れてきたんだ、と突っ込まざるを得ない。
ちなみにチワワとは、女子の如くイケメンに熱を上げている小柄な男子共のことだ。毎度毎度思うが、声枯れないのか、あいつら。
「おいよく聞け。今から転校生を紹介する」
「「「転校生!」」」
「イケメンがいい!!」
「うおおおお!!綺麗系の美人求む!」
「っシャア、王道転校生!!」
1人変なのがいるが、あれは腐男子という生き物だ。あれよりもっとキャラ濃い腐男子が学園内にいる。いや、腐男子オープンすぎる。
「ほら、ありす、入ってこい」
担任が名前呼びだと?元々知り合いだったのか?生徒の頭の上に疑問が飛び交う最中、扉が開き、転校生が入って来た。
「俺の名前は姫宮ありすだ!!!」
教室が一気に静まり返る。俺も一瞬呆気にとられた。……待て待て待て待て。何故マリモが喋るんだ?地球外生命体なのか?
髪は目を覆い隠す程もっさりしていて、まさに黒いマリモと言える。背は160cm位のチビだが、声がスピーカーいらずの大音量。お前の母星は一体どこ何だ?案の定生徒からは非難の声が上がる。
「嫌、何あのマリモ!」
「うわ、気持ち悪っ」
担任は全てスルーした後マリモに言う。
「ありす、右から2番目の列の1番後ろの席だ。一ノ瀬の隣な」
「おう!!一ノ瀬ってどいつだ?」
「ここだよ」
一ノ瀬が困ったように微笑みながら、手を挙げる。その途端教室内からさらなる悲鳴が上がり、混乱状態に陥った。何しろ一ノ瀬は親衛隊持ちで、爽やかなスポーツ少年としてチワワ達に人気だからな。
「お前、イケメンだな!!下の名前何ていうんだ?」
「颯太だよ。よろしくね、姫宮君」
「颯太だな!!よろしく!俺のことはありすって呼んでいいんだぞ!!」
転校生が一ノ瀬を名前呼びしたことで、新たな悲鳴が……。すすり泣きも聞こえてきた。
「何よ、あれ」
前の席の栗見が、理解の追いついていない顔でオレの方を振り返ってきた。
「知らねー」
厄介な生き物がやってきた。こいつ取り締まるのは風紀の役目になるのか…また仕事が増える…はぁ。
最初のコメントを投稿しよう!