10.友達

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―1年前のAクラスの教室。入学式から数週間後、元々内部生が多いため教室では既にグループが出来上がっていた。そんな中、ポツンと浮いた生徒が2人。それが俺と栗見だった。外部生の俺は勿論だが、何故初等部から通う栗見が浮いていたかというと…… 「栗見君、その……」 「何?告白なら止めてよね」 クラスメイトのチワワが、普通に話しかけてこの返答である。つまり、栗見は一言で言えば、“超ツンツン系気位の高いお坊ちゃん”だった。容姿は良いものの、その性格のために周囲に避けられていた。 そんなある日の放課後、教室に忘れ物を取りに行ったとき、 「―お前、マジむかつくわ。顔だけだったらヤれるのにさ」 そしてドアが開き、苛ついた顔をした奴が出てきた。気にせずドアを再び開けると、暗い表情の栗見が居た。 「なあ」 俺に気づくと眉根を寄せる。 「何?庶民の下等生物ごときが僕に話しかけないでよ」 栗見が蔑んだ目で見てきた。 「そこ俺の机だから、寄って」 面倒くさいから栗見の言葉を全スルーする。俺は数学の宿題を取りたいだけだ。 「…どうせさっきの聞いてたんでしょ。顔以外取り柄無い奴だと思ってるんでしょ!」 急に逆ギレされて正直にいうと面倒くさかった。 「別にどうでもいい。数学の宿題あるから」 「は?」 「あと、お前の顔は俺の好みじゃない」 それじゃ、と教室をあとにする。何なのあいつ、と呆然する栗見。言い返すわけでもなく、無視するわけでもなく。それに、顔が駄目だというのなら、 「…僕、何の取り柄も無いやつじゃん!」 ──こうして俺と栗見は出会った。そしてそれから俺は栗見に話しかけられるようになった。いつの間にか下等生物から庶民、無愛想を経て木島と呼ばれるようになり、つるんでいるようになったのだ。 と、いうことを一ノ瀬に説明した。そして栗見がドンヨリしている。 「どうした」 「…どうしたもこうしたも無いでしょ。本人の前で黒歴史話さないでよ」  「栗見、性格丸くなったな」 昔のお前に見せてやりたいぐらいには。 「確かに今のほうが丸くなってるね」 同じクラスだった一ノ瀬も納得する。数年ぶりにあった親戚の子を見るのと同じ顔をしてるな。 「あのときは周りにヤリ目で近づいてくるのとか変に絡んでくるのがよく近づいてたからツンツンしてたの!」 栗見は少し恥ずかしそうに言う。 「木島の黒歴史もいつか見つけて話してやる」 何やら一人で燃えている栗見。それを見て、微笑む一ノ瀬。俺の黒歴史、意外とあるからやめてほしいんだが。
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