11.清華星祭り

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11.清華星祭り

7月に入ると、学園は清華星祭りの話題で持ちきりになる。 清華星祭りとは、古来からある七夕の星祭りの風習にあやかってできたものだが、実際は金持ちのための縁日になっている。庶民の暮らしを学ぶのにも良いのだそうだ。屋台のりんご飴2000円とか、買う気する金持ちが理解できないが。庶民はそんなもの食わねーよ。 「星祭りは毎年楽で良いな」 風紀委員長が風紀室で話す。星祭りの屋台は毎年業者に委託しているため、その分仕事量が少ない。業者は学園の卒業生か、在校生の親族なので、学園の風潮を知られても問題ない上に、屋台の設置や管理、食材の調達やらをやらなくていい……。 「木島、カササギに会ったことあるか?」 俺が静かに喜んでいると、委員長が唐突に訪ねた。カササギって 「…鳥のですか?」 「いや、違う」 …だろうと思ったけどな。 「代々カササギと呼ばれている生徒が居るという噂がある。そいつにあることをしてもらったやつは、その1週間後から1年間幸せに恋人と付き合えるらしい」 ……胡散臭い。 「1週間後から1年間って微妙ですね。その1週間のうちに何があるかわからないし、毎年会わなきゃいけないじゃないですか。それに代々って、生徒だったら卒業してしまいますが」 「毎年カササギは同一人物だとは限らない。後継者に託してきたんだろう」 そんなものが流行ってんのかよ。1年程度、自分で恋人を夢中にさせていればいい話だと思うけどな。 「泉にこの話をしたら、鼻で笑われた。ひどくないか?恋人のいるお前ならわかるだろう?」 いえ、全然。というか、委員長愚痴りたかっただけか。 「なぁ、そもそもお前の恋人は、この学園の奴なのか?」 「さあ、どうでしょうか」 さらっと俺を探るな。副会長に言いつけるぞ。 「お前もつくづくおかしな奴だな。何故そこまで隠したがる?」 「俺は恋人を独占したいタイプなんです」 「だが、関係を隠したままだと周りを牽制しにくいだろう」 あんたつくづく考えが恐ろしい人だな。 ……まぁでも、俺も人のこと言えないかもな。 「牽制っていうのは裏でやるもんです。表沙汰になってしまったら、こちらが不利になることもあるので」 いざというとき、非合法な手段を使わないとは言い切れないしな。 「……お前末恐ろしいな。無表情な顔でそんなことを考えていたとは」 「いえ、冗談ですが」 「……」 それに表情は関係ないだろ。 でも、たまに考えることがある。周囲の前でも、帝と恋人として居られたら、と。帝に好意を持つ奴ら全員に、見せびらかせたらどんなにスッキリするだろうかと。 織姫と彦星は遠くにいても、会えば抱き合えた。俺と帝はこんなにも近いのに、会っても他人の振りだ。二人をつなぐカササギが居たって、意味はない。 俺たちはいつまでこの関係でいたらいいんだろうか。
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