11.清華星祭り

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♪笹の葉さらさら軒端に揺れる〜…… 「みんな〜来てる〜?」 「準備はいい~?」 「「じゃ、星祭り開催〜!」」 7月7日、清華星祭りがやってきた。午前中で授業が終わり、午後4時の現在。双子により、ゆるっと開催宣言がされた。 「木島、どうする?」 たずねてくる栗見。今日は風紀の仕事はなく、緊急時の呼び出しや現行犯発見とかがない限り、好きにしていいと言われた。と、いう訳で今回は栗見と回るのだが 「書紀はいいのか」 「ひ、浩様は花火のときに会うからいいの!」 ぽっと顔を赤くして栗見は答えた。しかも浩様呼びで。くっつくのも時間の問題だな。 ああ、それに花火。清華星祭りの最後の締めくくりは豪華な10分間の打ち上げ花火だ。生徒の多くは恋人や好きな人を誘って花火を見る。俺は去年通り一人で見るだろうけど。 「ねえ木島、射的しよ、射的」 「はいはい」 まぁ、いいか。栗見楽しそうだし。 ─数分後。 「うう駄目、全然取れない」 栗見はがっくしと項垂れた。さっきまでの元気どうしたんだ。 「何が欲しいんだよ」 「コーヒーと紅茶のティーバック詰め合わせセット」 射的の景品なのか……?もう俺はツッコむことを放棄する。仕方ない。 「おにーさん、俺も」 「かしこまりました」 屋台の人に1500円渡す。高い出費だ。 「え、え、木島取ってくれるの?でもあの位置じゃ無理でし」 「当たった」 「何で?!」 「射的はじいちゃんの田舎の祭りで、よくやってたからな」 嬉しいけど悔しい…とつぶやく栗見の手に詰め合わせセットを乗せる。 「じゃ、お金渡すから、」 「別にいい。来月だから早いけどな」 栗見は俺の言葉を聞いて、ぽかんとした後気づく。 「あ、誕生日プレゼントなの?!」 8月7日は栗見の誕生日。夏休み中で、昔から周りに祝われないと前に言ってた。 「木島がかっこよく見える。熱中症かな?」 ……照れ隠しが辛辣だな。これが栗身なりのありがとうなんだろう。 「どういたしまして」 あえて素直に応答しても栗見は嬉しそうだった。祭りパワーか。 ─その後も、栗見がクレープやら綿あめやら食べているのを眺めていると、あっという間に花火の三十分前になった。 「じゃ、僕は浩様のところ行くね」 「ん」 さて、暇になった。 「……風紀室行くか」 どうせ祭りの間は寮に帰れない。一応風紀の緊急の仕事が無いとも限らないからな。と、思っていたら、電話が鳴り始めた。 「はい」 『木島か?今どこにいる?』 「りんご飴のところです」 『至急、焼きそば前まで来てくれ』 ブチッ…ツーツー。 ……有給休暇って取れないのか。
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