11.清華星祭り

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* 幸いにも、りんご飴と焼きそばの屋台は100メートルも離れていなかったようで、すぐに到着した。そして、人混みの中で、委員長の後ろ姿が見えた。あの人髪長いから、一発でわかるんだよな。 「委員長、どうし」 「嫌だ嫌だ嫌だ!絶対、帝と回るんだ!」 ……ものすっごい嫌な声が聞こえてきたんだが、気のせいか?過労のせいにしたい。 「…神谷、どうにかならないのか」 委員長の横に帝がいる。ついに幻覚まで見えるとか…いや、これは現実がいいな。まぁ、現実なんだけど。 「木島、来たか」 「…委員長、取り敢えずこれ、剥がしましょう」 これ…つまり、帝に抱きついている転校生。 本当なら剥がすだけじゃ済ませないんだが。 「なぁ、帝、俺と回ろう!祭りなんだから、仕事なんか後でいいだろ!!」 「あのマリモほんとに何様なの?」 「いやっ、早く会長様から離れて!」 転校生のバカでかい声と、それに負けないくらいの周囲の批難の声。 「さっきからこの調子でな。マリモを引き離そうにも、俺だと周囲の目があって逆に炎上する。だから」 な?と神谷サマの微笑みが。 「…あれはアリですか?」 「やむを得ないな。アリだ」 帝、帝と騒ぐ転校生の背後にそっと近づく。転校生に引っ付かれている帝と目が合いそして── 「ぐっ?!」 秘技、手刀(失神レベル)。 ちなみに委員長直伝とも言っておこう。そして周囲は一気に静まり返る。 「…良いのか?これ」 帝がつぶやく。 「強制猥褻行為に対する、正当防衛ですので。委員長、これ保健室に持っていきますか」 「ああ、頼んだ」 よっ、と転校生を俵担ぎにして、さっさとその場を去る。その間生徒たちは改めて、風紀怖い……と思っていたらしい。 ──第2保健室にて。 清華学園には、第1保健室と第2保健室が存在する。第1保健室は、基本保険医が在注している。一方、第2保健室は、保健委員の運営が主となる。今は留守にしているようだが。今回転校生はただの気絶だから、第2で十分だろう。そうして転校生をベットに寝かせて去ろうとしたが。ガシッ。 「…………なぁ」 お前、意識戻るの早いな。あと、静かに喋れたのか。転校生が低い声を出すものの、俺の心は穏やかだ。いつもの声はでかすぎる。こんぐらいでいい。 「木島、稔?」 「…そうですが、何か?」 そう聞くと、転校生はグッと押し黙った。何なんだ一体。するとばっ、と顔をあげて叫ぶ。 「俺のこと覚えてるだろ!」 「いいえ、全然」 「何でだよ!お前は、お前は……」 俺が何だよ。 「お前は…俺のライバルのはずだろ?!」 ………わけのわからんこと言い始めたな、こいつ。 「俺に好敵手がいた覚えはありませんが」 「っ、お前が……お前がいなかったら!」 ああ、殴られる。さっきは不意打ち狙えたが、面と向かってこいつとやるのは無理だ。パンチがあからさまに、不良の喧嘩慣れした型で避けるすべはない。もうこの際潔く殴られるか。 「ちょっと待ちや、マリモ君」 腹をくくったのに、その直後鼻先スレスレで転校生の手が止まった。 「理不尽な暴力はあかんで?」 目の前には赤茶の髪の男がいて、転校生の腕をつかんでいた。 「何だよ、お前!はなせ…ってお前、まぁまぁイケメンだな!」 「まぁまぁは余計やわ」 あーこいつ。見たことあるな。2年生Sクラスの仁木天斗(にきあまと)。確か、抱かれたいランキングの方で、まぁまぁ上の方にいたやつだ。順位としては、記憶に残るようなものじゃなかったが、関西出身というのが目立っていたため、覚えていた。 「で、何しとるん?」
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