12.夏休み突入

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12.夏休み突入

星祭りが終わってからは、時間が過ぎるのなんてあっという間だった。 と、言うわけで現在は終業式の日の寮までの帰り道。夏休みがはじまると、生徒はみんな浮足立ってる。 「ねぇ、木島は帰省するの?」 栗見がワクワクと浮かれた顔で話しかけてくる。隣にいる一ノ瀬も心なしか楽しげに見える。 「お盆の間だけ」  「あ、そうか。生徒会や委員会って7月いっぱいまで仕事があるんだっけ」 「毎日あるのは生徒会と風紀だけだけどな」 一ノ瀬に答えていると、栗見がとたんにげんなりとした顔をする。 「木島、ワーカホリックまっしぐらじゃん」 俺はもう自分が高校生なのか社員なのかわからない。 「あれ、でもお盆の前後は寮に残るの?」 一ノ瀬が不思議そうに聞く。 「いや、違う」 8月の初めは帝と過ごす期間だ。普段いちゃつけない分、帝の家でひたすらのんびりするわけだ。 「じゃあどこにいるわけ?恋人の家に行くわけでもあるまいし」 こういうとき栗見は鋭いんだよな。 「よくわかったな」 「「え?」」 俺は構わずふあ、と欠伸する。 「「えええ?!」」 「声が大きい」 周りを歩いていた生徒が注目しているのに気づくと、二人は声を落として俺を質問攻めにする。 「ねぇ、ちょっといつから?!」 「相手は?どんな人?」 「言ったことなかったっけ」 「「聞いてない!」」 そろそろこいつらならちょっとバラしてもいいかと思ってバラしたはいたけど、こんなに反応されるとは思わなかった。  「一応中3から付き合ってる」  「ちょ、早く言ってよ!」 栗見に速攻ツッコまれる。 「それで、どんな人?」 一ノ瀬は目を輝かせながら聞く。 「……甘やかしてあげたいし、俺も甘やかされたいって思える人」  「うわ、すっごい惚気けるじゃん」    「素敵な人なんだね」 両者正反対の反応をする。ついペラペラ喋ってしまったが、このくらいいいだろう。ほんとはもっと言いたかったしな。 「僕だって書紀様とね…」 「あ、そういえば俺も蓮巳先生が…」 一気に恋バナが始まってしまった。とにかく夏休みはゆっくりしたい。
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