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13.体育祭の始まり
蝉がまだ元気よく鳴く中、2学期が始まった。やっと勉強に集中できるかと思いきや、1ヶ月もしないうちに体育祭が始まる。学園全体が体育祭ムードだ。正直言って男どもの熱気が暑苦しいんだが。
今は朝のHRで、体育祭のどの競技に出場するか決めている最中だ。大体1人1〜2競技出るのだが…
「ねぇ、何に出る?」
げんなりとした顔の栗見が俺に聞く。
「栗見は?」
「知ってるでしょ、僕が運動できないの。短距離走に決まってるでしょ」
まあ、だろうなとは思った。去年も同じだったしな。
「俺はパン食い競走と借り物競争以外ならなんでもいい」
「逆にそれ選ぶやつが信じらんない」
毎年パン食い競走は(パンの種類にもよるが)むさ苦しい男達のオカズにされる競技として有名だ。特にフランスパンとか当たったら最悪だ。よって出たがるやつはいない。
借り物競走はお題が“好きな人”やら“〇〇先生のヅラ”など外野から盛り上がるにはいいが、出場者にとっては迷惑極まりないものが多いためこれも嫌がられる。
「一ノ瀬君は?」
「僕はクラス対抗リレー頼まれてるから」
一ノ瀬は少し照れながら言う。
そういえばこの間、一年の中でもトップクラスで足が速い一ノ瀬に出てもらいたい!って体育委員が土下座して頼んでたな。
結局栗見は早々に一人勝ちして短距離走、俺は玉入れになった。一ノ瀬もクラス対抗リレーに決定だし、いま残ってるのは借り物競争とパン食い競走だが。
「はいはいはい!!俺、パン食い競争出たい!」
「ありす!何言って」
「だってパンただで食えんだろ?やりたい!!」
如月の願いむなしくマリモはパン食い競走に決定した。所々から上がる安堵の声。よかったな、お前の好感度がこれで少し上がったぞ。
その後はじゃんけんで負けた奴らが強制的にパン食い競走と借り物競争に出ることになった。多少モメたが、結果オーライだ。
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