16.決闘当日

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16.決闘当日

決闘するつもりはないけど一応屋上には来た。が、屋上には誰もいなかった。自分から呼び出しておいてそれはないだろ。 先月ほどではないけど、まだ日差しが暑いから早くしてほしい。 「ま、待たせたな!」 バタン!と扉を開ける音と共に転校生が登場した。若干息切れてるけど大丈夫か。 「よし、決闘するぞ!」 「…決闘って具体的に何するんですか」 「もちろん拳と拳で勝負をつけるんだ!」 ひと昔前の少年漫画か。極力殴り合いはしたくないんだが。 「なんであなたと決闘しなきゃいけないんですか。俺に勝って何かメリットありますか」 「お前は……覚えてないのか?」 「?」 「俺は…7歳のときお前に負けたんだ!思い出せよ!」 そんなこと言われても全く記憶にない。こんな強烈な見た目のやつと出会ってたら絶対覚えてるし。 「そんなマリモみたいな見た目の人と会った覚えないです」 「なっ…?!それなら、これでわかるだろ!!」 そう言って転校生が自ら髪の毛を取った。そうして現れたのは色素の薄い金髪と前髪で隠れて見えていなかった碧眼だった。顔もランキング上位者と遜色ないくらいに美形だ。 「ほら、どうだ?!」 ……いや、そんな見た目なんて聞いてなかったんですけど。めっちゃびっくりした。っていうか、こんなとこで俺にバラしちゃっていいの?隠してたんでは? 「いや……それでも記憶にないです」 こんなやつ会ってても忘れないはず。 「うっ……お前と出会ったのは忘れもしない7歳のある夏休みだった…」 いや、急に語りだした。この流れで?もう情報いっぱいなんだけど。そんな俺の様子を気にせず、転校生は語りだす。 ──俺は7歳の夏休みに田舎の別荘に遊びに来ていた。はじめは家で遊んでいたけれど、だんだんつまんなくなって外で遊ぶようになった。 そうして遊んでいるうちに、地元の子とも会うことが増えて、はじめはみんなと違う俺の見た目に怖がってたみたいだけどすぐに『可愛いね』って近づいてきた。俺はすぐ人気者になった。 だけどそんなある日、みんなが俺のところではなく別のやつに駆け寄って楽しそうにしていたんだ。 『なあ、何してんの?』 『あ、ありすちゃん!みのるくんの技見てたんだよ!』 『技?』 『うん、みのるくんのおじいちゃん柔道やってて、みのるくんもすっごく強いんだよ!』 そういった女の子は実は俺が密かに可愛いと思って好きだった子だった。今思うと初恋だった。 俺はムカついて 『そんなやつより、俺の方が強いし!』 と言った。意地は少し張ってたかもしれないけど嘘は言ってない。だって本当に俺は力が強かったし、腕相撲も負けたことがなかったから。それにそのみのる、と呼ばれたやつは平凡で無表情で全然強そうに見えなかった。 『おい、俺と勝負しろ!!』 『え、やだ』 即座に断られた。 俺はそれまで周りの人に嫌だと拒否されることがなかったから余計にムカついた。 『やだとか知らないし!おりゃああ!!』 思いっきり殴りにかかったけど、次の瞬間には俺はひっくり返っていた。 『悪いけど柔道したいんだったら、じいちゃんがやってる道場入ってからにして』 そういうと、みのるは用事があるからと、去っていった。 『ありすちゃん大丈夫?』 『木島、あの道場で一番強いし仕方ないよ』 周りがそうやって慰めたけど、俺はすっごく悔しくてたまらなかった。あいつ……きじまみのる……許さない。 そして、夏休みが終わり、別荘を離れることになったけど俺はそれ以来きじまみのるの存在を忘れたことはなかったのだった──
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