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静まったカフェテリアに会長の声が響く。
「転校生はどいつだ」
その一声でまた周囲がざわめきはじめる。
「転校生?」
「ほらあいつだろ、あの黒いの」
「あのマリモ?」
「王道展開キタァ」
ざわざわと揺れる周囲の視線の先には転校生。
「何だ、俺に何か用か!!」
転校生が椅子からがたっと立ち上がり、生徒会の方へ向かう。
「ありす!」
「あ、お前今朝会ったやつだな!えっと、泉だ!」
副会長がキラキラと光る笑顔を振りまきながら、転校生に歩み寄る。それに伴い、周囲が殺気立つのを感じた。
「泉、何しに来たんだよ!」
「ありすのことを生徒会に紹介したいと思いまして…」
「「うわ~この子が転校生?マリモみたいだね!」」
突然転校生の前に双子が出てくる。
「何だよ、人の事マリモって失礼だぞ!」
「「はいは~い、というわけで、どっちがどっちでしょうゲーム〜」」
「は、何だよいきなり!!」
出た、双子が新顔に仕掛けるイタズラゲーム。そっくりだからわかるわけな…
「僕が律だよ!」
「僕が陸だよ!」
「「くるくるくる〜さぁ、どっちがどっちでしょう!」」
「右が陸で左が律だろ?」
「「スゴイ!当たり!!」」
お前よくわかるな。やっぱり地球外生命体なのか?視力が発達した星から来たのか?
「「僕達君のこと気に入ったよ~」」
「わぁ〜双子と副会長落とすなんて、ありすちゃんすごいねぇ☆」
会計、お前には見えていないのか、一般生徒の殺気立った目を。俺は平穏に焼き魚定食が食いたい。
「お前イケメンだけどなんかチャラいな!」
「え〜ひど〜☆」
「本音隠して笑うなよ!俺、お前が本気で笑ってるところ見てみたいぞ!」
「!…いいね〜、ありすちゃん」
会計のわかりやすい愛想笑いは全員知ってるのにな。
「ん…お…しょ、き」
「お前書紀なのか!よろしくな!!」
「!…わか、る?」
「お前の言葉俺はわかるぞ」
……ああ、あれだな、安っぽい乙女ゲームみたいなシチュエーション。攻略簡単すぎて誰も買わなくなるやつ。周りの声は留まることなく、どんどん加速していく。それと同時に俺の目は死んでいってるけどな。
「何なのよ、あいつ!」
「生徒会の皆様に馴れ馴れしくしないでよ!!」
「神よ、俺の天国はここだった…」
腐男子がいきなり鼻血を出した。おい誰かあいつ保健室連れてけ。
「…お前が転校生なのか」
会長が話すと周囲は静まる。なんだろうな、会長はオーラが他とは違うんだ。
「お前カッコいいな!名前何ていうんだよ!」
転校生が急にキラキラし始めたんだが。
「…お前に教える名前なんて無い」
会長本能的に悟ったんだろうな、こいつはヤバいやつだって。名前教えたら一生つきまとってきそうだ。
「そんなこと言うなよ!俺、姫宮ありすって言うんだ!ありすって読んでいいんだぞ!」
「知らん。俺はもう戻る」
「お前カッコいいから、行っちゃダメだ!」
転校生が会長に抱きつこうとするのを見て、身体が動いた。
「木島?」
栗見の戸惑った声をよそに、会長と転校生の間に入り込む。
「失礼します」
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