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「うわー、風紀副委員長はこんな可愛い子泣かせてるんだ?」
屋上なんて滅多に人が来ないと思っていたが、誰か来た。そして雰囲気から察するにめっちゃ面倒くさいやつ。それにこいつの後ろに複数人の気配がする。
「どなたですか」
「さあ、誰だろうね」
現れたのはこの学園では少し顔が良いかなぐらいの男だった。茶髪でうさんくさい笑顔をしている。ネクタイの色からして2年生であることは確かだ。
転校生の後にこんな面倒くさそうなの相手にしたくない……。体力は結構消耗しているし逃げ切れる自信もない。
「木島、こいつ誰?」
「多分悪いやつ」
「失礼だね。まあでも悪いことはするかもね」
話し方腹立つからやめてほしい。適当な返事ばかりして、はぐらかされている。
「それより君は誰かな?君みたいな可愛い子この学園で見た覚えはないけどね」
「俺?俺はひめ、もごっ」
この馬鹿。素直に答えようとする転校生の口を手で塞ぐ。
今お前が転校生であることがバレたら余計ややこしい。火に油注ぐだけだ。
「まあいいよ、今日は風紀副委員長に用があるから」
「……俺に何か?」
「最近の自分の行動省みたら?思い当たるところあるんじゃない?」
最近……色々ありすぎて忘れてきた。体育祭やら決闘やら……いや……でも直近であったのって
「あの変なメモ入れたのはあなたですか」
「ぴーんぽーん」
言い方めっちゃむかつくけど、疲れて腹立たなくなった。
「それで、脅しまでして俺に何を要求するんですか?」
「俺が望むのは君の失脚だよ」
「失脚?」
「むかつくんだよね。この学園は昔からランキング上位者から委員会は構成されるのがセオリーだったはずなのに、なんで君みたいなのが選ばれたの?特待生ってだけで容姿も家柄も上に立つ者としてふさわしくない」
表面は笑顔で話しているが、目の奥は笑っていない。
でも、その意見は俺が風紀副委員長の就任時に散々言われた話だった。
「風紀委員長に指名されたので」
俺を指名した委員長は今までの慣習とかフル無視して、仕事で本当に使える人間かどうかで俺を選び取った。要は社畜気質があるかってこと。
「辞退すれば良かったのになんでそうしなかった?どうせ浮かれて勘違いしたんだろう?自分は有能な人間なんだと」
どんどん笑顔が消えていっている。少しやばいかもしれない。
「大丈夫。僕が君を簡単に引きずり落としてあげる。みんな、入ってきて」
そして体格のいい男3人が後ろから出てきた。
「木島、これどうするんだ?」
ずっと静かにしていた転校生が喋る。正直俺もこいつも体力ない。どうする。
近づいてくる男達から遠ざかるように後退しながら考える。
「暴力事件の被害者になったくらいでは副委員長解任なんてされませんが?」
「大丈夫。君が今から遭うのは性暴力事件だから。きっと明日には生徒に広まってるよ」
最悪な状況だ。でも、今一番危惧すべきなのは転校生に被害が及ぶこと。それこそ風紀としての信頼が失われる。
「…っ」
「おい、離せよ!!」
ついに俺は男の手に捕まり、2人がかりで押し倒される。転校生はあとの一人に後ろで両手を縛られたみたいだった。
「そっちの可愛い子は後でね。今は風紀副委員長の動画を取るからね」
取った動画を学園内に広めれば、俺の解任は確実だろう。
俺には風紀副委員長という役職はあるけど、おそらく学園の生徒が支持するのは、向こう側だ。ほとんどの生徒が俺を疎ましく思っているからな。
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