17.目が覚めたとき

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そして先生が出ていって10分ほど経った時だった。 コンコン 「委員長?」 さっき来たばっかなのに、また来たのか? 「俺だ」 何千回と聞いた絶対に聞き間違うことのない声が聞こえた。 「……帝?」 「入っていいか?」 「…………うん」 正直入ってほしくない。弱ってるところ見られるのが嫌だった。自分自身が一番この状況を情けなく思っていたから。 扉を開けて入ってくる帝の顔は見れなかった。 帝は何故か何も話さずそのまま三十秒くらい部屋は無言の状態が続いた。そしてやっと帝が口を開く。 「稔」 「……」 「稔」 二回呼びかけられてやっと帝の方を向いた。帝は……無表情だった。怒っているんだろう。そのまま、つかつかとこちらに歩いて来る。 そして、帝は俺を抱きしめた。 「……帝?」 「昨日、風紀から生徒会に緊急連絡が入ったとき、被害者の名前を聞いたとき、俺がどんな気持ちだったかわかるか?」 「……うん」 「すぐにでも駆けつけたかったんだ。俺が、俺じゃなかったら、すぐにでも走り出せたのに」 泣いてるんだとわかった。声が震えて、おれの肩にぽつぽつと温かいものが落ちてくるのを感じた。 駆けつけて欲しかった。でも無理だ。俺はの風紀副委員長だし、帝は生徒会長だから。俺は一般市民で、帝はいいとこの御令息だから。俺達の間には深い深い溝が会って、誰も俺達がその溝を埋めることを望んでいないから。 「帝、ごめん」 「お前に謝ってほしいんじゃない。俺が大事なときお前の傍にいてやれないのが悔しいだけだ」 俺、やっぱり帝を好きになって良かったなあって思った。こんなにかっこいいセリフ言ってくれる男、他にいるのか。 「いつもは弱虫なのにこういう時は本当にかっこいいよな」 「うるさい」 照れ隠しで言った言葉に帝は拗ねたように返事した。手を離し顔を上げると帝の目が真っ赤になっていた。まだ目も潤んでいる。 愛おしいってこういう気持ちのこと言うのかな。 俺は少し体を起こして、帝にキスをした。そうすると帝もゆっくりキスを返す。 「稔、愛してる」 「俺のほうがもっと愛してるから」 「じゃあ俺はその百倍」 結局、決着がつかないので同じくらいってことにしてお互い折れた。 そして帝にそろそろ退出したほうがいいと言おうとしたその時だった。 ─ガタンっ 「っ、誰だ?」 ドアの方から急な物音がした。もしかして今の会話、聞かれたか? 『ちょっ?!バレたじゃん!!』 『どうす──ですか……』 『─あ─でも──』 どうやら複数人居るようで揉めている。……その声には聞き覚えがあるんだが。 「さっさと出てこい」 「はぁ~い」 まず最初に出てきたのは会計、そして副会長、風紀委員長。だけかと思ったら、後ろから書紀と双子もそろーっと出てきた。 つまりは生徒会と風紀の役職持ち大集合、というわけだが。どういう状況? 「お前らこんなとこで何しているんだ」 「私は急に消えた会長を探そうと思って歩いていたら、どこぞの風紀委員長に絡まれました」 「それで〜その後俺が仕事ちょこっとさぼって歩いてたら、いずみんに見つかってお説教食らってて〜」 「「浩と僕たちがそれを見つけて」」 「そ…のあと、おれ、が…会長がこっ…ちに、行ったの、見たって、言って、今ここ」 なるほど、って納得したくもない。なんでそんな偶然が起こるんだ。何百分の一の確率?
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