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19.文化祭が近づく
時間が経つのは早いもので、もう文化祭の季節だ。
この間まで転校生や奥平のことでばたばたしていたのに、今度は文化祭の準備に追われている。寝たい、帝といちゃいちゃしたい……
「木島、ぼーっとしないで。メイド喫茶になってもいいの?」
栗見に揺さぶられて現実に戻る。今はクラスでやる出し物決めの最中。蓮巳は授業の最初は出ていたが、途中で用があるからと文化祭係に丸投げしていった。
清華学園の文化祭の出し物は学年ごとに違う。1年生は舞台発表、2年生は模擬店、3年生は何でもありになっている。そして2年生は例年メイド喫茶や女装系のカフェが人気で取り合いになっている。
「うーん。でもいつも通りSクラスに取られちゃうんじゃないかな?去年の2年生もそうだったよね」
苦笑いして一ノ瀬が言う。まあ、この学園の制度的にSクラスの言い分が一番通る仕様になってるから仕方がないんだけどな。
「でもその次に権限あるのはうちのAクラスでしょ?女装なんてやりたくない」
「去年なんだかんだ逃げてたよな」
去年シンデレラの劇をやることになったが、さり気なく裏方に逃げていた。
「一ノ瀬は王子様役やってたよな」
「うん…恥ずかしいから始めは断ったんだけど、何度もお願いされて…」
一ノ瀬ほど王子様役が似合うやつはいないと思う。満場一致でみんなが勧めていた。
「えーっと、みんなの案を集めた結果、『プリンセスによるご奉仕♡ラブりん喫茶』、『The男飯〜ガテンの道を歩め〜』、『和カフェ ほのぼの庵』の3つが候補に上がりました。多数決とります」
文化祭係が何事もなく進めようとするが……ちょっと待て。いつの間にそうなった。
おそらく1つ目はチワワが提案して、それに対抗して女装が嫌な漢どもが2つ目を提案したんだろう。
もはや一択しか選びようがないんだが。
「……はい、多数決の結果『和カフェ ほのぼの庵』になりました!」
ほっ…とクラスの多数が安心するがチワワは納得いかないらしい。
「せっかくだから女装したかったのに」
「やりがいなさそう」
それを見て文化祭係が困り顔になる。
「着物で接客するんだよね。男性用と女性用の着物両方選べるようにしたらいいんじゃないかな?洋装もいいけど和装の女装も可愛いと思うよ」
一ノ瀬がすかさず提案するとチワワはたしかに、と頷く。
「家にあったかな?可愛いやつ」
「僕は赤色がいいな」
キャッキャと笑顔ではしゃぐチワワ達を見て文化祭係も安心する。
「さすが乙女心わかってるよね」
「ああ、さすが去年王子様やってただけあるな」
「ちょっと二人とも?その言い方やめて」
赤くなった一ノ瀬を見て、蓮巳に見せてやりたいなと思ったのは内緒だ。
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