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「な、何だよお前!!」
「お、前」
転校生の憤慨する声に混じり会長の戸惑う声が聞こえた。本当は介入するつもり無かったんだけどな。
「風紀副委員長の木島です。これ以上の騒ぎになると、風紀案件になります」
「俺が話してるんだよ、邪魔すんなよ!」
「これ以上生徒会役員とお話になるのなら、風紀委員会を通して貰わないと困りま」
「俺が話してるんだよ!」
人語が通じない。やはりこいつは地球外生命だった。そんな俺たちを見て会長が話す。
「き、…風紀」
「はい」
「こいつは俺が相手す」
「風紀案件です」
「だが」
「風紀案件です」
「……」
俺はこれでも怒ってんだよな、焼き魚食うの邪魔されたし。じっと見つめると、会長は理解してくれたようだ。不服そうだが。
「あいつ風紀の副委員長じゃない?」
「ああ、あの凡人な」
「庶民のくせに出しゃばって」
「生徒会と対立してるのに」
周りの声を聞いて、会長がはっとする。
そして酷く忌々しげな顔をわざとらしくつくって言葉を発する。
「…今回は引いてやる。俺様は寛大だからな」
「「ちょっと待ってよ〜会長」」
「えー帰るのぉ~」
「ん…」
そう言って去って行く会長達を見て、転校生はさらに怒鳴り散らす。
「お前のせいであいつが行っちゃっただろ!どうしてくれるんだよ!!」
「そうですね」
「お前性格悪いぞ!!」
「そうですね」
マジうぜえよ、お前。何勝手なことばっかしてんだ、元の星帰れや。そんな俺の態度を見て、転校生が手を振り上げる。
「あっ…」
「おい、うちの委員に何してる」
副会長の焦った声の後、馴染みのあるバリトンボイスが。……風紀委員長遅いんですが。数分前から居てたの知ってるんですがね。
「!……カッコいいな!!」
お前はそれしか言えんのか。
「名前何ていうんだ?」
「ありすっ、その男に近づいてはいけません!危険人物なので!!」
「だーれが危険人物だって?泉」
「ひっ」
風紀委員長が副会長の腰をそっと撫でる。
……副会長にとっては危険人物だろうな。風紀委員長は副会長に片想いしていて、長年アプローチを重ねているのだが、一向に交際に発展していないのである(傍から見れば、両片思いにしか見えないので、周囲はそっと応援しているのだが)。
「どどどこを触ってるんですか!」
顔を真っ赤にして後ずさる姿は、女王様には見えず、まるで初恋に戸惑う生娘そのもの。
その反応を楽しむ風紀委員長も、いい加減にしてほしいものだ。
「泉?!大丈夫か!」
転校生お前は空気の読めないやつなんだな。
「姫宮、だったな」
「そうだよ!!ありすって呼んでもいいんだぞ!」
「姫宮、お前は今、うちの委員に暴行を振るおうとした。間違いないな?」
「っだって、あいつが邪魔するから!!」
俺は邪魔じゃねーよ。とも言えず黙って明後日の方向を向く。
「だからと言って暴力に訴えようとしたことに変わりはない」
風紀委員長がばっさり転校生の意見を両断する。こういうとき、頼りになる上司なんだよな。しかし、転校生には何も通じてなかった。
「お、俺は悪くない!!!」
ダッと一直線に扉の方に走り去ってしまった。よし、そのまま故郷帰れ。
「ありす!……神谷、覚えておきなさい」
副会長は風紀委員長を睨みつけた後、転校生を追いかけて行ってしまった。
「委員長の愛しの人は趣味が悪いですね」
「あいつはピュアなだけだよ」
ゲロ甘ぇ……。恋は盲目ってやつか。
「今回は未遂で済んだからいいものの、これから先が思いやられるな」
はぁっと溜め息を吐く委員長に周りがときめいている。しかし、本当に仕事が増える予感しかしない。風紀はさらに激務になりそうだ。
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