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転校生が転入してから2週間。新入生歓迎会が近づく学園は、混乱の渦中にあった。
「昨日は第2音楽室がやられました」
「バレー部は部長が陥落したようです」
転校生は校内の破壊行為を進める一方、親衛隊やファンクラブ持ちを次々と虜にしていってる。しかも、マリモは生徒会のやつらにも付きまとっているらしい。
はじめは生徒会のやつらも喜んで相手していたが、新入生歓迎会の仕事で手一杯な今はそれどころじゃ無いらしい。同じく風紀室も、委員の転校生関係の報告とその後始末で忙しく、ろくに仕事が進みやしない。
「委員長、どうされますか」
「田中は第2音楽室の修繕を環境委員長に頼め。佐藤はバレー部部長のファンクラブの動向をつかんでくれ」
「「御意」」
「木島、お前は俺と来い」
「はい」
仕事ができる人間とはかっこいいもんだ。周囲を置いてどんどん出世していく。
だからこそ、それを反面教師に俺は公務員を目指そう。出世より安定がほしい。
「どこへ向かうんですか」
そういえば肝心の行き先を教えてもらっていない。でもたしかこの先にあるのって…
「生徒会室だ」
いや、何故こんな忙しい時に。俺の怪訝そうな顔を見て風紀委員長は答える。
「姫宮の行動は風紀だけならず、環境をはじめとする、全委員会の職務に悪影響をもたらしている。生徒会も対処に手を焼いているだろう」
「はい」
「新入生歓迎会も控えているからこそ、情報は共有し、一元化しておく方が効率的だ。何より……俺が疲れたから癒やし(泉)がほしい」
「最後のが本音ですか」
「全部本心だ」
まあ、無理もない。副委員長の俺でさえ疲労困憊の仕事の多さなのに、委員長の仕事量は想像を絶するものだろう。
「失礼する」
風紀委員長と共に生徒会室に入室する。
そこには風紀室と大差ない書類の山があった。生徒会役員の顔もやつれ果てている。
「「あ〜風紀だ〜……」」
「何しに来たのぉ……」
「神谷ですか……」
「……」
しんどそうだな。ワンコに至っては喋りもしねぇくらいだし。会長はかろうじて生きているが、クマが酷い。
「神谷、今は忙しい。用があるなら後に…」
「手を組もう」
……沈黙。
「「「「「「は?」」」」」」
「委員長、唐突過ぎです」
この様子だと疲れた頭には何も入っていかないだろう。
「新入生歓迎会までの暫らくの間、風紀は生徒会と情報共有を行い、それに当たって合同作業をすることを申し出る」
「断る」
会長が即答する。風紀委員長は腕を組みながら、何故だと言う。
「双方にメリットはあるはずだが?」
「お前と四六時中いるなんて真っ平だ。それにお前のほうがメリットがでかいだろう」
会長は副会長の方を見ながら、答えた。確かにうちの委員長が得だわ。
「それはお互い様だ。言っておくが俺だけじゃない。木島は絶対として、他の委員も数人連れてきて作業する」
木島含めうちの委員は優秀だから今よりも遥かに効率がいいはずだ、と委員長が持ちかける。すると会長はピクッと眉を動かしてうなずく。
「わかった」
「会長?!」
副会長が驚き、戸惑った顔で会長を見つめる。他の役員はぼーっとしてもはや話すら聞いていないようだ。
「勘違いするな。今は背に腹を変えられん状況だからだ。それに、他の委員は連れて来なくていい。少人数の方が情報漏洩しにくいからな」
「了解」
会長の言葉に風紀委員長は笑顔でうなずく。その時、会長も内心喜んでいることを知っていたのは間違いなく俺だけだろう。
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