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3.新入生歓迎会
「ねぇ、今年何するかな?」
「久々に生徒会の皆様が見られる…」
―朝のAクラスの教室にて。
「……眠い」
「あんたそれしか言えないの」
栗見はうざったそうな顔をこちらに向ける。今日はいつも以上に周りがうるさくて、眠れやしない。それもそうだ、今日は……
「新入生歓迎会のときくらい、シャキッとしなよ」
「……そのせいで眠いんだよ」
会長とのんびり過ごした後、再び学園に戻って作業したが、業者のミスで荷物搬入は遅れるし、転校生が壊したところの修理依頼しないといけないし……。
「木島、将来ブラック企業に勤めてそう」
「もう勤めてる」
風紀という名のな。しかも、鬼上司付きだ。
眠気と戦っていると、学級委員がでかい箱を持って教室に入ってきた。
「今から全員、箱の中からリストバンドを取って下さい。箱は覗き込んではいけません。あと、リストバンドを持った人は横に置いてる時計持っていって下さい」
生徒達は次々とリストバンドを取っていく。赤、白、白、赤、白、赤、赤……。いい感じだな。
「あれ、木島はやらないの?」
「あぁ、委員長か副委員長は委員会活動のために、参加しないっていうルールあるだろ」
あ、そっかと納得する栗見。新入生歓迎会は特に委員会の仕事が多い。そのため毎年、委員長か副委員長とその他数名は参加しないことになっている。風紀委員長は『泉が参加するから』と、笑顔で俺に仕事を押し付けに来た。今年は生徒会も参加すんのか。俺は参加したくなかったから、別にいいけど。
「体育館移動しよ」
小波様が待ってると、笑顔の栗見に引っ張られる。……お前は元気だな。
*
体育館に移動すると全校生徒が集合しているからか、ものすごい熱気を感じる。男ばかりで余計暑苦しい。
「皆さん、お静かに」
副会長が舞台上で話し始める。簡単な時候の挨拶を暗記したようにすらすら述べていく。
「──さて、先月のクラス別提案の意見から、今年度の新入生歓迎会は『鬼ごっこ』に決定致しました。これから説明するのは、今回実施する『鬼ごっこ』に関するルールです」
長ったらしいから省くが、簡単に言うとこうなる。リストバンドの赤い方が羊、白い方が狼。狼は羊を捕まえた人数、羊は狼から逃げ切った時間で競う。ちなみに生徒会は狼と羊の両方に属し、黒のリストバンドを付ける。また、生徒会を捕まえた狼は捕まえた人数が1.5倍され、生徒会に捕まえられた羊は逃げ切った時間が1.5倍されるという特別ルールがある。鬼ごっこに何故狼と羊が出てくるのかというと、会計と双子が付け足した悪ノリとしか言いようがない。
「__以上でルール説明を終わります。次に特典について、会計の麻倉が説明致します」
「はいは~い☆特典は前年と同じ上位者10人に与えられるけどぉ」
お前の喋りは長いから省略だ。つまり、上位者の狼5名、羊5名に特典が与えられ、今年は3択のうち、1つ選べる。
まず、“学食半年無料+リクエストメニュー10回分の券”だ。普通の生徒は嬉しいもんだろう。次に“海外リゾート1週間旅行チケット”。金持ち校ならではの発想だな。最後に“誰とでも遊園地デート出来る権利”。これが1番意味のわからんやつだが、生徒たちが最も欲しがる特典。デートに誘えるのは学園内の人間なら生徒会でも教師でも誰でも可能で、誘われたやつは原則、断ってはいけない。何ならこのためだけに命かけて参加してるやつも少なくない。
「__では最後に会長からの一言です」
知らない間に副会長に変わっていた。そういえば帝いたのか。あ、会長の顔になってる。
「お前ら……存分に楽しめ」
顔が良くないと許されない俺様な笑みを浮かべる会長サマ。そして湧き上がる黄色い悲鳴と歓声。ほんとに一言しか喋んないのな。
「ありがとうございました。それでは蒼井庶務、開催の合図を」
「うん!みんな準備はできてるかな〜」
「いくよ〜」
「「スタート!」」
さぁ、仕事がはじまる。
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