永遠の憂鬱

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「ブルーマウンテンをください」  古川がメニューも見ずに注文したので「じゃあ、同じものを」と言う。俺はコーヒーの味も銘柄もよくわからないのだ。 「改めて、古川miel先生。本日はお時間を頂戴しありがとうございます。インタビューの時間は1時間を予定していますが、よろしいでしょうか?」 「もちろん時間は大丈夫です。でも、先生なんて呼ばれると居心地が悪いですね」 「では、古川さん、でいいですか?」 「それでお願いします。あと一つ、お願いがあるのですが」  古川は薄いショルダーバッグから、黒く小さな物体を取り出した。 「萱野さんもボイスレコーダーを使われると思いますが、私の方でも記録に残しておきたいんです。男性の声は拾いにくいことがあるので、これを胸ポケットに入れておいてくださいますか?」  差し出された物体を受け取ると、旧型なのか、想像より重い。が、文句は言えない。インタビュー記事と一緒に、新作イラストを独占掲載させてもらえないか。その交渉をこの場でしなければならないのだ。 「お預かりします」  10センチ四方、幅2センチ程度の塊。俺はそれを胸ポケットに滑り込ませ、録音モードにした自前のボイレコはテーブルに置いた。
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