永遠の憂鬱

4/9
前へ
/9ページ
次へ
 クラスに一人はいたな、そんな奴。そして、そんな奴はだいたい……と思ったとおりに、古川は続けた。 「よくある話で恐縮ですけど、いじめられてました。たぶん当人たちにとっては、クラスの陰キャをいじって遊んでた、程度の認識だったでしょうけどね」 「ああ……それは、お辛かったですね」  他にどう言えばいいか分からず、ありきたりな返事しかできない。彼は癖なのか小首を傾げ、穏やかに微笑みながら話した。 「真冬にね、パンツ一丁で掃除用具入れに閉じ込められたことがあるんです。体育のとき、男子は教室、女子は更衣室で着替えだったんですが、五時間目の授業のあと着替え中にむりやり押し込められて。女子が帰って来るまで、図体のでかいやつが背中でドアを押さえていたんです。女子が戻ってきたら、ねぇ、出るに出れないじゃないですか、こっちは白ブリーフ一枚だし。結局そのまま一時間半、放課後みんなが帰るまで出られませんでした」 「ひどい、ですね……」 「ですよね。すごく寒くてがたがた震えて、そのせいで掃除用具入れに肌が触れると、金属製だから本当に、飛び上がるほど冷たくて。必死で体の震えを抑えました。あのときの寒さとジレンマは、今も忘れられません」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加