永遠の憂鬱

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 聞き間違いかと思った。  爆弾? これが? まさか。いやでも確かに、ボイレコにしては、重い。 『私がスマホで操作できることは、さきほどお見せしましたよね』 「……」 『タップするだけで、起動します』  言葉が出ない。代わりに、全身から冷や汗が吹き出す。 『なんで、って思ってますよね? きっと』  口の端を少し上げたままだと分かる声で、古川が聞く。さっきまでの、目の前で話していた時と同じ口調で。 『やった方は忘れても、やられた方は一生忘れないんですよ』 「何、を……」  かれた声を絞り出した俺の鼓膜を、ふっ、という低い吐息が震わせた。 『ずっと、あなたを震えあがらせたいと思って生きてきました』  俺を「あなた」と呼び続け、丁寧な口調を崩さない古川。淡々と語るその様子が、余計に恐ろしく感じられた。  本気だ。  そう本能で悟り、鼓動が速る。 「そんなことしたら、この店にも被害が……」  古川が俺を恨んでいたとしても、「来てみたかった」と言ったこの店まで巻き添えにするのはためらうのではないか。彼の良心に期待した俺の希みは、やわらかな声で打ち砕かれた。 『大丈夫。そこにいる店主も、あなたと同じクズ野郎ですから』
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