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それからもしばらく莉愛と僕は十字路の隅っこでしばらく話していた。
さすがに遅くなってしまうので、僕たちはそれぞれの家路につくことにした。
「何か絢斗とはつい話し込んじゃうね。中学の塾の帰り道もこんなんばっかだった」
それは僕も同じ意見だったが、僕は同意せず「そろそろ帰る」とだけ答えた。莉愛は鼻の頭まで紅くなっていた。
「バスケ部、頑張ってね。3年になったら大会も応援しにいくよ」
「え、オマエはオマエんとこ応援しろよ」
「ウチ、女子高だし。男バスないよ」
「あ、そうか」
「だから、タイミングあったら応援いくから、せめてそこまで頑張って」
「あー、もうしつこいな。最後の大会で負けるまで辞めないから心配すんな」
ちょっと冷たく言ったのに莉愛は笑っていた。
「バイバイ」と言って、莉愛は十字路の先へと消えていった。
僕は後ろ姿が見えなくなるまで見送ってから、自分の家へと歩き始めた。
別に部活を辞めてるわけじゃないし、今でも練習は行ってるわけだし、莉愛に言われなくたって続けるし――、とバカみたいなことを頭の中で考えていた。
なんとなく明日もバスケを続ける意味が見つかったような気がした。
空からひらひらと舞う雪を見ていたら寒くなってきて、そういえばさっき駅で缶コーヒーを買ったはずだと僕はコートの右ポケットに手を入れてみた。
凍えた身体を温めてくれると期待していたそれは、ポケットの中ですっかり冷えてしまっていた。
「まだ冬は冷えるんだなー」
ポケットの中から取り出したぬるくなった缶コーヒーにプルトップを開けた。
ぬるかったけれど、とても甘かった。
明日も朝練はあるんだっけかなと思いながら、僕はまた雪の帰り道を歩き出した。
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