君と歩く帰り道

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 バスに乗っているときに人生の意味がわかった人もいるらしい。  でも僕は毎日、電車に揺られても人生の意味どころか、今日という日の意味もわからない。  放課後、まっすぐに帰るべく一度の乗り換えを挟んで電車に一時間近く乗って五百木(いおき)駅に着いた。電車の扉が開くと凍てついた空気が僕の頬を襲う。  16時を過ぎれば暗くなるこの季節、駅のホームから見える家や木々は白い雪で覆われていた。うんざりするぐらい見飽きた景色だ。  電車から踏み出した足が、降り積もった雪に少し沈み、ジャリッという音を立てる。昼間に積もった雪が夕方になって凍り始めているのだ。  滑らないように踏みしめながら僕は錆びれた駅のホームを歩く。みんなが踏み荒らした足跡に足を取られないように、気をつけながら。それでいてサブスクで聴いている音楽に浸りながら。  改札口を抜けたところにある自動販売機で缶コーヒーを買った。  (ここ)から家まではニ十分ほど歩く。温かいものでもなければ歩いてなどいられない。  早く十八歳になって車の免許を取れば、自分の車で温かくしながら帰ることができるのに。  そんなことを思いながら駅を抜けようとするとセミロング丈の髪の女子が立っていることに気が付いた。
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