忠史 啓子

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レンジでチンして食って下さい、と袋の奥底(おくそこ)にいたせいで歪んでしまった黄色いメモ紙が顔を覗かせたがすでに、唐揚げに(かじ)りついていた。それを横目に見つけてしまった。僕のいうことは絶対聞いてください生活面に関わりますから、と念を押されて早数年。無視をするわけにも行かず、黙って立ち上がる。なかなか開いてはくれない。(あるじ)のいうことは(さえぎ)りたいと言う様子。 字を書くときはいつも右手の彼でも、握力(あくりょく)は一般男性の標準数値を(ゆう)に越えている。 ふん、と力加減を間違えないようにレンジの扉を開け、食べかけの唐揚げ弁当は回るお皿に置かれる。扉は閉められ久しく押されるスタートボタン達。
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