大和

2/3
前へ
/10ページ
次へ
揃いきれていない白いスニーカーからは灰色の靴下が飛び出している。 下を向く少女の睫毛は長かった。 「あの、なにか」 「あ、これは、その、アジサイが綺麗で触っていたんだ。そしたら音が、声が聞こえて、わからないけれど、足が動いていた」 散歩をしていたんだ、と男は続けた。 少女は男から目を逸らした。(うれ)いを()びた顔。涙の(あと)。 「ここで会ったのもなにかの縁だと思う。君がよければ、仲良くしてほしい⋯⋯です」 男はタダシと名乗った。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加