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不穏なパーティー
この異世界には、太陽が2つあった。まず大きな青白い太陽が昇って明るくなったあと、数時間遅れて小さな黄色い太陽が顔を出すと気温が上がった。
「まずは、食料の調達だ。ある程度蓄えたら、町を探そう」
パーティーの指揮は、勇者宮瀨が執った。とはいえ、パーティーの頭脳は藤原さんで、彼女が転生の際に授かった異世界の知識に基づいて僕達は動いた。
数日間、食べられる木の実やキノコを集めたものの、育ち盛りの高校生だ。物足りなさ、食べ足りなさは否めない。
「あー! 肉っ! 焼肉、食いてぇっ!」
「俺は白飯だっ! 米が欲しい!!」
「あのさぁ、藤原さん。手頃な小動物とか鳥なんて、いないかなぁ?」
体力系の2人の不満が爆発する。村西までもが、縋るような眼差しで藤原さんに詰め寄った。彼女は男性陣を見回し、大袈裟に溜め息を吐く。
「分かってるでしょ。ここは異世界なの。そう簡単に食べられない。毎日がサバイバルなんだから!」
身体の大きな彼らは、代謝のペースが速いんだろう。人間だったときに比べると、僕はあまり空腹を感じなくなった気がする。スライムに転生して、初めて良かったと思った。
「ねぇ、尚を見つけた池に、魚とかいないかしら?」
険悪な雰囲気を見かねたトーコが口を挟む。体力系コンビが身を乗り出した。
「なにっ! この際、タンパク質なら構わねぇっ!」
「俺、釣りは得意だぞ!」
「じゃあ……行ってみる?」
武器を手に、次々に立ち上がる。やれやれと首を振ると、藤原さんがトーコをジロリと睨んだ。
「分かってるわよね。狩りに行くってことは、私達も狩られる可能性があるってことなのよ?」
「じゃあ、このまま体力が落ちていくのを待つの?」
2人の視線が火花を散らす。僕は、あの巨大水蛇を思い出して不安にかられたけれど、先頭を行くトーコの横に付いていった。
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