困ったものです

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 私如きが何を言っても駄目なんです。言いたければ偉くなってから言えってんです。けれども偉くなれそうもないからこれからは言わないことにしようかな。口は災いの元ですし…。  所詮、大人を改心させようったって無理なんです。大概狡賢く出来上がっちゃってますからどうにでもちょろまかしますし、ムラ社会にどっぷり浸かっちゃってますから因習に沿って掟を守り通します。今風に言えばコンプライアンスを遵守ってことですかね。  しかし偉かろうが偉くなかろうが言うべきことは言わねばならんのです。そうして大抵損するだけですが、言わねばならんのです。  世渡り上手から見れば、不得要領ですし、出来るだけ世間を避けて通って来ましたから全然擦れてなくて良いようですが、随分後ろめたい面もありまして良心の呵責に耐えないです。ですから人のことをとやかく言える資格はないと言えなくもありませんが、言わずにはおれない質なのです。そんな訳で貧乏クジを引かされているようで困ったものです。  こういう人間は何でも勘定ずくで事に対処する人間から見れば、頭悪いとか思われがちですが、奇麗事を言いませんし、お世辞も言いませんし、阿諛追従しませんし、レトリックも使いませんし、巧言令色でもないですから正直なもんです。ですから今時の若い女は出っ歯傾向にあるとそんなことも時には言いたいのですが、流石に面と向かっては言えませんのでエッセイに書いたりしています。けれどもそれでは飽き足らず口に出してしまえば、出っ歯が牙に見える位、般若の形相になりますからそれを目の当たりにした日には震え上がることでしょうね。ま、私もいくら何でもそれ程、馬鹿正直でないですから何とか生きていられます。で、八重歯が歯並び矯正前の聖子ちゃんみたいで可愛いねなんて言ってやりますと、奴さん、喜びましてね、いやはや困ったものです。
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