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 教室へ行く前に体育館の裏で度なしのメガネをつけて、ポニーテールを三つ編みにする。  スカートは折り込んでいたものを元に戻せば、いつも通りの立花紅葉の出来上がりだ。  教室に着くと自分の席に座り、担任が来るまで読んでいようと読みかけの文庫本を取り出した。   「めっちゃ、かわいいじゃん」 「私もこんな顔だったら勝ち組だったのに……」  クラスの中でも派手なグループの女の子達が何かを見ながら騒いでいる。  ふと彼女達が見ているスマホの画像が目に入った。  誰かが撮ったらしい航平くんと私の登校して来た時のツーショット。 「でもどこのクラスの子?」 「1年かなぁ」 「でもリボンが赤だよ。2年だって」  うちの学校の制服は学年ごとにリボンとネクタイの色が違う。3年生が緑、1年生が紺でうちの学年が赤だ。 「こんな子、見たことないね」 「他のクラスの子も知らないって言ってたよ」 「でも朝いたってことは、絶対いるはず」 「休み時間に探してみようか」 「でも……航平くんにバレたらまずくない?」 「手を出したら怒るって言ってたけど、特定するだけなら大丈夫だって」 ――怖い。特定して、そのあとどうするつもりなんだろう……    本当にいつもの格好に戻してよかったと思った。   
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