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私が通う向陽台高校の毎朝の名物は、群がる女子たちを引き連れた戸崎航平くんだ。学校一の人気者で生徒会長。成績も優秀でスポーツ万能、性格も良く爽やかと非の打ち所がない。
実のところ、私も戸崎くんのことは好きだ。片思いだけど。でも私、立花紅葉は三つ編みメガネで真面目が取り柄、クラスで話しかけられるのはテストや宿題のヘルプくらいというボッチの高校2年生。
戸崎くんには学年一二を成績で争う存在として辛うじて意識してもらえているくらいだろう。
「立花さん、おはよう」
戸崎くんの集団を追い越そうとした私に戸崎くんが声をかけた瞬間、後ろの女子達の視線がキツくなった。
「お、おはようございます……」
「次の期末は負けないから」
「は、はい……」
試験の話だけだったせいか女子達になぁんだという空気が漂った。
いつもは学校が終わるとそのまままっすぐ家に帰り、勉強するのが通常モードなのだが、その日は急に従姉に呼ばれたため待ち合わせ場所の喫茶店に向かった。
「ゆずねえ、おまたせ。用って何?」
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