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発情*
朝から雲行きが怪しく、テレビからは梅雨入りしたというアナウンサーの声が聞こえた。
「母さん、今日怠いから念の為学校休んでもいい?」
「薬は?飲んだ?」
今までにない体の怠さと頭痛、異様な体の熱さが俺を襲う。
「いや、まだ」
「飲んで寝てなさい。早く帰って来るようにするから」
「うん、ごめん」
「食欲は?」
「あんまないけど薬飲みたいから食べる。あっ、そのトーストでいい」
「何か作ろうか?」
「いや、いい。遅刻するよ?」
「もうこんな時間?何かあったら連絡して」
「分かった。いってらっしゃい」
「いってきます」
慌ただしく母は出ていった。椅子に座ってトーストを齧る。はぁ、だる。少しだけトーストを食べて抑制剤を口に放り込んだ。こんなの初めてだ。
荒い息を吐きながら自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いているとインターホンが鳴った。あぁ、ゆきだ。休むって連絡すんの忘れた。もう一度インターホンが鳴って「こうちゃーん?」と呼ぶ声が聞こえた。その声を聞いた瞬間どうしょうもなく体の奥が疼き始めた。何だよ、これ。扉のところまで壁伝いに歩き「ごめん、今日休む」という言葉をなんとか絞り出す。
「体調悪いの?」
「うん」
「大丈夫?」
「平気だよ。寝たら治る」
この扉の向こう側にαがいる。欲しい欲しい欲しい。自分の意志とは関係なしに体がゆきを求める。鍵を開けて扉を開けていた。欲しくてたまらない。
「こうちゃん!?何、この甘い匂い?」
「ごめん……」
「ねぇ、これって」
どうして扉を開けたんだ。慌てて扉を閉めようと手を伸ばすがゆきがそれを阻止した
「ごめん、何も見なかったことにして帰って」
「無理だよ。こんな状態のこうちゃん放っておけるわけない」
「じゃあ抱けるのかよ?お前がどうにかしてくれんのかよ」
「こうちゃ……」
「学校遅れるから、マジでもう放っといて」
「ごめん」
それでいい。崩れ落ちそうになる体をどうにか奮い立たせる。ゆきには見られたくなかったのに。俯いた俺の体をゆきが抱きしめた。
「ごめん、こうちゃん。帰れない」
「ゆき……」
「ごめん」
必死に謝るゆきを見てなぜだか涙が溢れてきた。
「助けて……ゆき」
瞬間唇を塞がれた。甘く痺れるような口づけにもっともっとと強請るように唇を重ねる。唇を離して見たゆきの顔はとてつもなく色っぽい顔をしていて、手を取って俺の部屋に誘った。
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