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武者震いったら武者震い!
目の前に聳える、大きな大きな山。
ついにここまで来た、と私はごくりと唾を飲みこんだ。いよいよこの山を乗り越えて、目的を達する時が来たのだと。
「大丈夫ですか?」
隣に立つ部下が、不安気にこちらを見る。
「震えてらっしゃるように見えますが」
「何を言う」
確かに、先ほどから震えが止まらないのは事実。だが。
「怯えているのではない、これは武者震いだ」
ふん、と鼻を鳴らして言った。
「やっとこれで、私達は目的を達することができるのだから。ここまでくるのは本当に長かった。多くの敵を打ち払い、試練を乗り越えてやっとここまでたどり着くことができたのだ。今日は記念すべき日になるであろうよ」
「そうですか……」
「お前こそ、怯えているのではあるまいな?何、問題ない。あとはこの山を制覇するのみ。安心して私についてくるがいい」
「わかりました」
やや強張った顔の部下の背をぽんぽんと叩いて私――この世界を統べる偉大なる魔王は、一歩踏み出したのだった。
「いざゆかん、世界征服の時間だ!」
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