汚れなき風景

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強い風に 真綿のような雪が降る 行方も定めず 定まらず 思い思いの方角へ 互いにぶつかり乍ら 殺し合い乍ら 白い血飛沫を飛び散らして 何も無い真っ白な世界 ただ雪が乱舞する 真っ白な世界で 私は一歩も動けずにいる この一面の雪野原を 汚してしまうのが恐くて 動けずにいる 凍え乍ら 震え乍ら 凍ってゆく自分を どこか遠くから見つめている やがて 降り止まない雪が 私の内にも降り始めて 私の心を凍らせてゆく 私の目を 鼻を 口を塞ぎ 呼吸を妨げ そして私は ただの もの言わぬ雪像となる この汚れない雪野原を ほんの僅かでも 汚さぬように
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