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夕刻のこと3
『アッハッハ、やっぱり人間は面白いねー!』
顔だけの妖怪は笑い転げた。
この妖怪の名前は大顔。
そのまんまな名前の妖怪。
趣味は人が慌てふためく所を見る。
なんとも迷惑な奴である。
『面白いから辞めることができない、さっきの人間の顔ときたら!』
さっきほどの男の顔を思い浮かべると、大顔は再び笑ってしまう。
と、そんな時。
「「「「ああ、お前人間か~?」」」」
と背後から人の声が。
男だけでなく、女や子どもなど色々な声が。
どうやら複数人以上はいるようだ。
そう思った大顔は、再び人が驚く場面が見えると考えもうそのまんまで。
『ああ、そうだぞ~!』
驚かせることにした。
目の前にいるのは人かと思っていた。
が。
「「「「人間…」」」」
「「「「やっと…」」」」
「「「やっと…」」」
「「「「「斬れる!」」」」」
その瞬間、大顔は縦に真っ二つとなり。
それがなんなのかも分からないまま。
灰となって消えてしまった。
大顔を斬ったそれは。
「「「こいつ、人間違う」」」
右手の刀を軽く振るう。
すると近くにあった木がドスンと倒れた。
「「「ああ、人間に……」」」
「「「人間に会って…」」」
「「斬りたいよ……」」
残念そうにつぶやき、それは闇夜に紛れ込んでいった。
その後。
その場所で人を驚かす妖怪が二度出ることはなくなった。
嵐もないなかで木が倒れたことは、ちょっとした話題にはなったが。
妖怪に関係しているかもしれないことから人々はそれ以上深堀りすることはなかったそうな。
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