1. 出会いはゴミ箱

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1. 出会いはゴミ箱

2人の出会いはどこですか?なんて、友達でも恋人でもなりそめを聞かれた時はよくある質問だと思う。ならこの2人の場合はその質問にどう答えるだろう。 もちろん、答えはひとつ。 「……ゴミ箱?」 そう、ゴミ箱だ。暗い路地裏の汚い汚い大きなゴミ箱。生ゴミも酒の瓶も缶も、コンビニの弁当の空も。色んなものが散乱してる汚い路地裏のゴミ箱の中に1人傷だらけの男子高校生がいた。 東高の【日内(ひうち)】というのは廃れたヤンキーの間では有名な名前で、まさにこの彼のこと。日内詩乃也(ひうちしのや)18歳。高校3年生になったばかり。 目付きが悪いせいか中学からよく不良に絡まれるようになり、やられっぱなしに嫌気が差して中2から喧嘩をするようになった。 別に売られたから買ってきただけだ。この目付きの割に、自分から喧嘩を売りに行ったことはない。そうしている内に、いつの間にかヤンキーの間で名前が知れ渡り他校からも同じ高校からも目を付けられるようになっていた。 今日もいつものように他校のヤンキー達に売られた喧嘩を買い、殴り殴られを繰り返し相手が怯んだ所で「ざまあみろ」とよそ見をしながら走っていた。 そしたらこのゴミ箱にハマったのだ。 階段を飛び降りた時につまづき、尻から綺麗にゴミ箱にハマった。奇跡的にサイズもピッタリで自力では抜け出せない。 一一一やばい、こんな所他の奴に見られるわけにいかない、カッコ悪すぎる。マジで抜け出せない。クソ、最悪…俺は何をやってんだ…。 自業自得だが行き場のない苛立ちを感じる詩乃也。この後、連絡先の中から適当に女選んで呼び出すか。1発やって鬱憤晴らそう、などと考えてみるが、ここから出ない限りはどうにもならない。 「はー、だる」 そうため息をついた時。どこからともなく、詩乃也の方へ足音が近づいてきた。 ヤンキーでもない、通報を受けて追いかけてきた警官でもない。詩乃也と同じ制服を着て、行儀よくカバンを肩にかけて歩いてきた男。 制服ってこんな綺麗なものなのか、と疑問に思ってしまうほど同じものを着ているとは到底思えない。 それに、繊細な筆で描かれたような整った顔と汚れひとつない栗色の髪の毛。嫌味なほど小綺麗な男だ。 詩乃也は髪こそ染めていないバージン毛だが、耳はピアスをたくさん開けて穴だらけ。薄汚れた制服を着崩して、体は喧嘩のせいで古傷から新傷まで色とりどり。 全く真逆のタイプ。その男は合成かと思うほどこの場所が似合わない。 「あ?誰、お前」 最大限に睨みを効かせて男を威嚇した詩乃也だが、彼は今ゴミ箱にハマっている。絵面を想像したら睨んだところであまり狂気は感じないだろう。 「何見てんだよ、てめぇ。早くどっか行けよ!」 男はじっと澄んだ瞳で詩乃也を見つめてくる。ゴミ箱にハマっていることを置いといてもここまで怒鳴られたら少しくらい恐れるとは思うが、男の顔色は全く変わらない。 それどころか、詩乃也に向かって言葉を投げかけた。 「それ…、もしかして出れないんですか?」
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