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そのうち、唇でこじ開けられた口の中に波璃の舌が侵入してきた。ちゅくちゅくと、音を響かせながら詩乃也の舌と絡め合わせている。
コンクリートに囲まれているせいで、よりキスの音が響いていて耳を塞ぎたくなるほど。
「は…、ぁっ、ん」
「ん…詩乃也くんとキスするの好き…」
「ん、むっ、だまっ…れ…」
「もっと舌出して」
絶対言うことなんて聞くか、と詩乃也はわざと舌を引っ込め唇を閉じた。だが、波璃に手を握られ体を壁に押し付けられると、食らいつくようにまた激しく唇を犯された。
一一一こんな昨日より激しいやつ…!マジでふざけんな、俺はやられっぱなしなんかじゃねぇ…。こいつぶん殴ってやる…
「…っん、まっ、て…はっ、ぁ」
「はぁ…、詩乃也くん…」
「まっ…、も、ぁ…!」
「普段強気なのに、キスの時可愛い…ん、」
息継ぎの間に度々耳元で囁かれ、詩乃也の首筋に鳥肌が立っている。頬を紅潮させ息を荒くしている自分が嘘のようで、詩乃也は勢いよく顔を逸らした。
「…っはぁはぁ、ふ、ざけんなよ、お前」
一一一こんなの俺じゃない…!なんで年下の、こんな奴にされるがまま…!
波璃はぺろりと自分の唇を舐め、味を確かめるように転がす。
「なっ、なに…して…」
「……これがコーラの味なんですね」
「は、?」
「さっき飲んでたやつ。甘くてちょっと苦いけど、美味しいんですね」
「…っ!!」
激しくキスをしたせいで乱れた髪の毛と、その怪しく笑う姿はあまりにも妖艶だった。それを目の当たりにした詩乃也は、抵抗するどころかもはや体の力が抜け落ちていく感覚がした。
「詩乃也くんは、僕に色んな初めての味を教えてくれるね」
「…っお前、マジで意味わかんねぇ」
「なんで?」
「何考えてんのかも、何したいのかも分かんねぇからだよ!!」
一一一俺みたいな奴に構って俺がいいとか言いやがって…マジでどんなモノ好きだよ。それにコロコロ雰囲気も変わるし、思考も全く読み取れねぇし…キスばっかしてくるし!!
「そうかな…?ああ、昔から感情を表に出さずに内石家の息子として恥ずかしくない振る舞いをしろって躾られてきたからかな。そのせいで人と接するの下手くそだけど」
「な、んだよそれ…」
「そんなもんですよ、僕なんて。完璧なんかじゃなくて親の言いなりで生きてきた、ただの人形」
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