2.真逆の2人

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波璃は虚しく笑うと、また唇を近付けようと顔を傾けた。 「これも、親の言いなりか?」 「……え、」 「俺を拾ったのも、俺に付き合えって言ったのも、こうやってキスしてくんのも。言われたからやってんの?」 「…違いますよ」 「じゃあ人形じゃねーだろ。ゲイのこと話そうとしてんのも、婚約者阻止しようとしてんのもお前が決めたことだろ。ちゃんと自分の意志あんじゃねーか」 「…っ詩乃也くん」 「い!いや!ていうか、キスはやめろ!!何回すんだよ!ぶん殴るぞ!!」 顔を真っ赤にさせながら慌てて暴言を吐く詩乃也を見て、波璃は嬉しそうに、でも泣きそうに笑う。 「…さっき、僕が何考えてるか分かんないって言いましたよね」 「あ?それがなんだよ」 「僕、知らないうちに自分の意思で行動できてたんだ…きっと詩乃也くんと出会ったからだと思うんです。詩乃也くんといたら、感情表現ももっとできそうな気がします」 「な、なんだそれ…」 「それに、今は割と分かりやすいと思いませんか?」 壁に手をついて至近距離に来た波璃は、昨晩のような獲物を狙う目付きをしていた。それに気付き、ごくっと唾を飲む詩乃也。 あれほどに荒れ果てて恐れられている不良が、波璃の前では捕食寸前の小動物のようだ。 「…お、い、近っ…」 「今、詩乃也くんに欲情してますよ。僕」 「はっ!!?」 「ねぇ、半年の間…付き合ってくれますよね?」 「…っおい、離せ、む」 そして、また口付けられた唇。頬に手を添えられながら優しく触れたと思ったら、何度も小鳥がついばむように繰り返される。 詩乃也から熱い息が漏れた瞬間、またペロッと唇を舐め、2人の舌が混ざり合った。 「んんっ…、お、い」 「ん、は…っ、ねぇ…」 「待っ…!ぁ、ん…っ、波璃っ!!」 「え…」 そう叫んだ瞬間、波璃はピタッと動きを止めて肩を掴んだ。詩乃也を見つめながら目を大きくして驚いている。 「んだよ…!」 「名前、呼んでくれましたね」 「…っべ、別に!!!」 「もっと呼んで、詩乃也くん…」 「だっ、誰が呼ぶか…っ!」 心底嬉しそうにニヤッと口角を上げた後、波璃は詩乃也の腰を抱き寄せ、キスをした。
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