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筋が細い腕なのに手はしっかり大きく、詩乃也の腰を容易に引き寄せてしまう。足を割って体を入り込むと、波璃は詩乃也の唇をちゅう、と吸い上げた。
「…っん!!んん、」
「ん…、僕と付き合ってくれますよね?ねぇ」
「ふぁっ、待っ…、やへほ…」
一一一ダメだ…このままだと酸欠になる…、それよりも唇と舌おかしくなりそう…。マジでなんでこいつ、こんなキス上手いんだよ。俺もなんで、殴り飛ばすか舌噛んでやるくらいできないんだよ…。
「…っわ、かった、から…」
一一一こいつの前では、なんで抵抗できないんだ。あの俺なのに?東高の日内なのに?こんな喧嘩もしたことないような、細っこい奴に…。
「つ、付き合ってやるから離せ!!但し半年だけだからな!!!親父が帰ってきたらすぐ話せよ!そしたら速攻関係は終わりだ!!」
「詩乃也くん…!」
「はぁはぁ…っ、クソが、苦しいんだよ…、お前のキス…」
多少言わされた感もあるが、本気で突っぱねられなかったのは詩乃也自身。それを自分でも気付いているから、訳が分からず頭の中でぐるぐると混乱しているようだ。
だが、波璃はそんなことお構い無しに詩乃也を思い切り抱き締めた。
「ぅわっ!!!」
「嬉しい…約束ですよ。今付き合うって言いましたからね?」
「分かってるっつーの!!だから離せ!」
「ていうことは、少しは僕のこと気になってくれたってことですか…?」
「は!?勘違いすんなよ!誰がお前のことなんか…!」
一一一そうだ、俺は別にこいつを気になったりなんてしない!!好きになるはずもねーんだから、ただ交換条件を素直に飲んでやっただけだ!!
「…そうですか。あ、でも」
「な、んだよ」
「仮にも付き合うってことは…これからも、恋人らしいことしてもいいんですよね?」
「……は?」
「その方が、より雰囲気とか信ぴょう性も出ると思うし…。そうだ!キスとか、デートとか、それ以上のこととかも…」
「なっ…!」
一一一内石波璃…。よく分かんねー…というか面倒くさい上に厄介な奴に捕まった。俺とタイプは真逆でもある意味厄介者同士だろ、こんなの。
「調子乗んな!!形だけだろ!?誰がするかよ!」
「照れてるんですか?」
「テッ!?照れるわけねーーだろ!」
喧嘩三昧の不良に、ある日突然金持ちの王子みたいな彼氏が出来た。
「じゃあ、もっとキスしていいですよね?」
「だっダメに決まってんだろ…!んんっ…!」
そんな嘘みたいな本当の話。
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