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詩乃也の怒号を無視してそう言ってくる男。仮にも睨まれて怒鳴られているのに、全く動じず平気そうな顔をしている。それに余計腹が立ち、詩乃也はチッと舌打ちをした。
「お前に関係ねぇだろ」
だけど、効き目はやはり悪いようだ。1歩1歩近付き男はついに目の前までやって来た。
一一一新手の喧嘩の売り方か?こいつ、俺がゴミ箱にハマってなきゃ今頃痛い目遭わせてるぞ。
この男の目は、詩乃也を観察するような動かし方をしていてまるで品定めをしているようだ。
一一一クソ苛つく。
「あなた…その制服。僕と同じ東高の人ですよね?」
「だったらなんだよ」
「何年生ですか?僕は2年生です」
一一一こいつ年下かよ。大体、後輩達にはヤバい3年生がいるとか噂されて怯えられてるのに…。なんだコイツ。平然と話しかけてきやがって…。
「…お前、3年の日内って聞いたことあるか?」
「ひうち…ああ、なんか名前は聞いたことあります。その人に目が合ったら殴られるから合わせちゃダメとか…」
一一一校内のやつ目が合っただけで殴ったことはねーよ。噂に尾ヒレがついてついて、そうなっただけだ。まあビビらせるには丁度いいけど。
「それ俺だよ」
「え?」
「分かったら早く消えろ。今イライラしてんだよ、こっから出たらまずお前のこと殴る」
一一一これだけ言えば消えるだろ…。
しかし、男子生徒は去るどころか指を顎に当てて何やら詩乃也を見て考え事をしているようだ。
「僕は、2年D組の内石波璃と申します」
「は……?」
「り」
「違えよ!!名前復唱したんじゃねぇよ!何名乗ってんだ、アホか!俺の話聞いてたか!?消えろっつってんだよ!」
一一一俺のヤバい噂も聞いてて、直接殴るって言ってやったのに身分明かすとか頭おかしいんじゃないか?
思い切り怒鳴った直後、遠くから喧嘩の通報を受けたパトカーのサイレンと詩乃也に喧嘩を売ったヤンキー達が探し回っている大声が聞こえてきた。
一一一やっべ!!!サツも来てんのかよ…。しかもあいつら俺を探してるし、こんなゴミ箱にハマった所見られるのは勘弁!!!補導されてもめんどくせえし…どうするか…。
「あの…、もしかして今困ってますか?」
「あぁ!!?てめえはさっきからなんなん…」
「僕が助けますよ」
「…は?」
「ゴミ箱からあなたを出して、追ってきてる人達からかくまってあげます」
一一一何言ってんだ?こいつ馬鹿じゃねぇの?
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