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「ふざけてんのか?こっから出たらお前をまず殴るっつってんだろ」
「でも今、このままだと警察に補導されるか、他のヤンキーに見つかって恥をかくかじゃないですか?」
一一一話通じてるようで、通じてねぇだろ。これ。
「僕は別にいいですよ」
「なにがだよ」
「あなたに殴られても蹴られても」
「…は、」
波璃と名乗った男子生徒は、淡々と無の表情を浮かべている。冗談とは思っていなさそうで、本気で殴られてもいいと言っているようだ。
一一一こいつ、こんな小綺麗な身なりと顔してて俺に殴られてもいいだと?意味わかんねぇ。何考えてんだよ。
《そこの高校生達!止まりなさい!》
いよいよすぐ近くから聞こえてきた、サイレンと機械越しの警察の声。もうすぐそこにヤンキー達と警察共に迫っている事が分かる。さすがの詩乃也も焦りを隠せなくなってきていた。
一一一やべえ、もう近いぞ。見つかるのどっちが先でもやべえ!!
「ほら、早くしないと面倒なことになりますよ」
「…っクソ、うぜぇ!!いいから早くしろ!」
「分かりました。あと助ける代わりに僕のお願い聞いてくれますか?」
「ああ!?なんでそんなこと…!」
「じゃあ、置いていきますよ」
「あーーーもう!分かったから早くしろや!」
この時、焦りと苛立ちから詩乃也は頭が回っていなかった。代わりのお願いなんて、ろくなものじゃないはずなのに。
そう後で気付いた時にはもう遅かった。
「じゃあ、もう1回引っ張りますよ。せーの」
「いってててて!!」
「よし…、抜けましたね。じゃあ走りましょう」
「は!?おまっ…おい!!」
「早くこっち!」
波璃の手を借りて、ようやくゴミ箱から抜け出した詩乃也。一息つく間もなく、手を掴まれ引っ張られるまま走り出した。
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