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意外にも足が速い波璃にされるがまま連れて行かれ、路地裏からだいぶ離れた頃には詩乃也は息絶え絶えになっていた。
そしてようやく足を止めた時には、パトカーのサイレンもヤンキーの声も全く聞こえない場所にいた。しかもさっきの路地裏とは真逆の場所。
目の前には大きな門があり、白を基調とした壁が続いている。そして光沢のある高級感溢れる表札には【内石】と書かれていた。
一一一なんだここ…、ていうか内石ってさっき聞いたような…まさか、こいつの名前!?
「…っはぁ、はぁ、おい!!なんだよここ!」
「え…、僕の家ですけど」
一一一やっっぱり!!!なんだここ、豪邸じゃねぇか!こんなデカい門見たことねぇ!
「…まさか、お前すげえ金持ちかなんかか?」
「まあはい…、父は社長をやっていますから。それなりに」
波璃はカードキーをかざし、大きな門を自動で開ける。何がなにやらで呆気にとられている詩乃也を手招きし、中へ入るよう促した。
「こっちです。玄関に入らずに裏から僕の部屋へ行けば、バレません」
「はぁ、、?俺に家ん中入れって?」
「かくまうって言いましたよね。ここが1番安全です。部外者は入ってこれないから」
一一一なんでこんなことに…。こいつがかなりの金持ちだってことは分かったけど、じゃあなんでうちの高校通ってんだよ。もっといい所行けるだろ。
一一一それよりも、ここからならバレないってことは家の奴にバレたらやばいってことだろ。荷が重すぎるわ。
「いい、もうだいぶさっきの場所から離れたし、遠回りして帰るわ」
「え…」
「じゃー、助けてくれてサンキュ」
しかしあっさり帰れる訳もなかった。波璃は詩乃也の腕を強く掴み、逃がさないと言わんばかりの眼圧で詩乃也を睨む。
「なっ…離せよ!!まじで殴るぞお前…!」
「さっき言いましたよね?助ける代わりに僕のお願い聞いてくれるって」
「げっ…」
「忘れたなんて言わせません。大人しく付いて来てもらいます」
「うわっ!おい!!離せ!」
「逃げるなら、さっき追いかけてきた警察と学校にも報告しますよ?今日のこと」
「…こっ、この性悪!!」
詩乃也を強引に連れて家の中へ入った波璃は、玄関に入らず裏の方へと向かう。そして自分の部屋らしき場所まで来た時、大きな窓の前にある柵をよじ登った。
「ここが僕の部屋です。入ってください」
「…マジかよ」
一一一この敷地内広すぎな上に、ここがこいつの部屋?窓デカすぎだし、なんで柵に葉っぱが巻きついてんだよ。童話とかナントカ宮殿とかにありそうな家だな。
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