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戸惑っていると思っていた波璃の表情は、溢れ出る欲を抑えようとしているようなものだった。息を荒くして、後ずさりする詩乃也に忍び寄る。
一一一な、な、なんだコイツ!!困ってたんじゃねーの!?獣みたいな威圧感なんだけど!?
窓から出ようとしていた詩乃也の手を引っ張り、波璃は自分の方へ抱き寄せた。ゴミ箱の一件で詩乃也の服はドロドロに汚れていたので、密着した波璃の手と服も同じように黒ずんでいる。
「なっ!!は、離せ!!!」
「キスしていいって言いましたよね?」
「それは…っ、できねぇと思ったから…!ゲイってのが嘘だと思っ…」
「でもあなたが言ったんですよ。だから嘘じゃないって証明します」
「なっ…」
一一一力入んねぇ。さっき、こいつなら背も普通でガタイもよくないし、簡単にねじ伏せられるって思っただろ。なのになんで力入らないんだよ、俺。
「んっ……!」
詩乃也の腰を抱くようにして引き寄せながら、唇を重ね合わせた波璃。柔らかく優しく触れた唇は角度を変えて、詩乃也の唇をついばむ。
「ん、ぅ、、はっ…ぁ…」
「…っは、」
「やっ、め…!んんっ、」
波璃は詩乃也の頬に手を添えて、顔が逃げないように引き寄せる。そして言葉を発しようと詩乃也が口を開いた瞬間に、舌を滑り込ませた。
「…っ!!ん…」
一一一いや、え?なんで、なんでこうなってんだ?なんで俺は男にディープされてんだよ。さっき初めて話した奴に…!!
「は、……!ぅ…」
「…っ濃厚な方、してみろって言いましたよね」
「くっ、はぁはぁ…、も、やめ」
「まだですよ」
一一一男にキスされるなんて初めてだし気持ち悪いと思うはずなのに…、なんで俺はされるがままなんだ?マジで力入らねぇ、抵抗できない…。
「ぁ…ん、、ぅう…」
広い部屋の中にお互いの舌が絡み合う音と、荒い呼吸だけが響く。たまに聞こえる波璃の吐息も詩乃也の耳を犯すようだ。
とうとう足に力が入らなくなった詩乃也は、よろけながら背後にあったベッドに尻餅をついてしまった。
「まっ…待て!!!もうやめろ!」
「誘ったのはそっちですよ」
「…っ誘ってねぇ!もう証明になったからやめろっつってんだよ!」
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