第2話 獣人

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第2話 獣人

「ん?なんか反応がどんどん消えていってるな」 ゴブリンを倒した後、ステータスを確認していると俺の神眼に表示されていた敵の反応が次々に消滅していることに気が付いた。しかもどうやら、その反応はここから、そう遠くない場所のようだ。 「気になるな…行ってみるか」 俺は周囲を警戒しながら、その場所まで全速力で駆け抜けていった。ちなみに今の俺のステータスはこうである。 ―――――――――――――――――――― シンヤ・モリタニ 性別:男  種族:人族 年齢:18歳 Lv 10 HP 1000/1000 MP 1000/1000 ATK 1000 DEF 1000 AGI 1000 INT 1000 LUK 測定不能 固有スキル 生殺与奪・神眼・王の権威・魔眼・状態異常無効・錬金術・不屈の闘志 武技スキル 刀剣術:Lv.MAX 体術 :Lv.MAX 剣術 :Lv.3 槍術 :Lv.3 斧術 :Lv.3 杖術 :Lv.3 魔法 火魔法 :Lv.1 水魔法 :Lv.1 土魔法 :Lv.1 風魔法 :Lv.1 無魔法 :Lv.2 空間魔法:Lv.2 称号 異世界からの来訪者・運の女神の加護・逆境に抗いし者・ご都合主義・恐怖を与える者 ―――――――――――――――――――― 武技スキルは刀剣術や体術が既にLv.MAXの為、別枠として、ストックできないかもしれないという心配はあったがそれは杞憂に終わった。あと、称号がなんか増えてた。 ―――――――――――――――――――― 恐怖を与える者 生きていることが苦痛に感じる程の恐怖を与えた者に贈られる称号。生物へ与えるダメージが増え、生物から受けるダメージが減る ―――――――――――――――――――― 「ここか…」 時間にして5分くらいで俺は目的地に辿り着くことができた。周りを見渡すとあちこちに戦闘の跡が見受けられる。馬車が派手に横転し、積荷が全て投げ出され、所々、焼けた箇所がある。特に異臭を放つ場所に目を向けるとそこには魔物や人の死体が折り重なっていた。 「こんな状況だと生存者はいない…いや、待て。まだ、いるぞ」 少し離れた場所に恐怖で足が竦んで動けないであろう少女とその少女へと今、まさに襲い掛からんとするゴブリンの姿を俺は捉えた。少女は泥だらけになりながら、大量の涙を流してはいるものの、その目は生を諦めた者のそれとは到底思えなかった。となれば、このままただ黙って放っておけば、彼女に待っているのは十中八九、悲劇そのものである。 「縮地」 直後、俺は無意識のうちに発動していた。武技スキルの体術Lv.7を会得した者のみに扱える御技を。少女の運命を変える為に。 ―――――――――――――――――――― (なぜ、こんなことになってしまったのだろう。私はこんな場所で魔物に殺される為に生まれてきたのだろうか?いや、違う。私が生まれてきた意味は必ず、どこかにあるはずだ。それを見つけられずに殺されるのは嫌だ。剣で斬られるのも嫌だ。痛いし、怖い。…やっぱり、死ぬのは嫌だ!こんなところで終わってたまるか!私は…もっと生きていたいんだ!!生きて生き抜いて、私の存在意義を見つけたいんだ!!) 「う、う、うわああぁぁー!!」 私がそう叫んだ直後、一陣の風が吹いた。その風が収まると目の前に人が立っていた。こちらに背中を向け、見たことのない武器を構えて。それはまるで御伽話に出てくる勇者様のように偉大な後ろ姿だった。私はこの時のことを生涯忘れることは決してないだろう。 「見つけた…私の勇者様…」 直後、私は安心感と蓄積された疲労により、そのまま倒れてしまった。でも、気を失うその直前、確かに見た。圧倒的な剣技で勇者様が魔物を一刀両断するその姿を。 ―――――――――――――――――――― 「うぅ〜ん…?」 「お、気が付いたか?」 ゴブリンを倒した俺が後ろを振り返ると少女は気を失っていた。そのまま放置していれば、また襲われかねない為、この場所に留まることを決めた俺はあちらこちらに散乱する死体からスキルを回収することにした。その作業を数分で終わらせると周囲の警戒とステータスの確認をしていたのだが、思ったよりも早く少女の目が覚めたようだ。 「あれ?私はあの後…」 「もしかしたら、記憶がごっちゃになってるのかもな」 「そうかもしれないですね…って、ゆ、ゆ、ゆ、勇者様!?」 「ん?勇者様って俺のことか?」 「あ、あ、あのあの、この度は命を救って頂き」 「一旦、落ち着け。はい、深呼吸」 「は、はい!す〜は〜…す〜は〜…勇者様の匂い」 「だめだ、こいつ」 「はっ!す、すみません。まだ頭が上手く働いてないみたいで」 「本当か?」 「ほ、本当です。で、では改めまして…コホンッ」 居住まいを正し、こちらを見つめる少女。近くで見ると非常に整った容姿であることが窺える。腰のあたりまで伸びた銀髪、クリクリとした大きな目、鼻筋も綺麗に通っている。上半身に至ってはある一部分の主張が激しいものの、肌が白く華奢である。しかし、ボロボロな貫頭衣と泥だらけな現状が少女の良さを掻き消してしまっていることに俺は不快感を覚えた。もったいないと。だが、次の瞬間、それらを吹き飛ばすくらいの衝撃が俺を襲った。 「この度は命を救って頂き、誠にありがとうございます」 俺は見てしまったのだ。少女の頭の上にピコピコと動くあの耳を…。数々の作品に登場し、多くの読者から愛されてきたあの伝説のケモ耳を…。 「お、お前…まさか、獣人か?」 「へ?そ、そうですけど」
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